八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第二百六十六話 秋田へその十二
「百人切り達成するぜ」
「寒さにもめげないで」
「やってやるぜ」
「身体を壊さない様にね」
あと病気にもと内心思った。
「頑張ってね」
「そうしていくな」
「うん、そっちでもね」
「一旦日本に戻っても仕事はな」
「そっちで続けるんだよね」
「そうするからな」
だからだというのだ。
「欧州各国で目指してくるな」
「そこは相変わらずだね」
「仕事をしながらな」
そのうえでというのだ。
「幸い欧州各国を巡ってるしな」
「それでだね」
「ああ、目指してくるな」
「そうするんだね、ただね」
「ただ?」
「親父やっぱり暫くそっちにいるんだよね」
欧州拠点はイタリアのヴェネツィアだ、僕は親父に暫くの間そこにいるのかと尋ねた。
「そうするよね」
「ああ、何年かは間違いないな」
「そうなんだね」
「十年はいるかもな」
「長いね」
「いや、十年なんてな」
親父は僕の今の言葉にはこう返した。
「長い様でな」
「短いんだ」
「実はそんなものだよ」
「そうなんだね」
「十六年だってな」
十年に六年もプラスしてきた。
「短いものだよ」
「そうなんだ」
「人間の一生自体がな」
今度は十六年どころかだった。
「一睡の夢ってな」
「一睡って」
「そんなものだっていうからな」
「そんなものなんだ」
「そうさ、十六年どころかな」
もう十年は何でもなくなっていた。
「そんなものだよ」
「そんなものかな」
「そうさ、俺もこの歳になるまでな」
「一睡の中の」
「半分もないな」
「百歳まで生きる中の」
「本当にそれだけさ」
一睡の半分もない、その程度のものだというのだ。
「だから十年なんてな」
「何でもないんだ」
「長くないさ」
僕は長いと言ったけれどだ。
「そんなものだよ」
「そうなんだね」
「だからな」
「すぐに戻って来るって言うんだ」
「そうさ、それで戻ってきたらな」
その時はというと。
「また日本で働くかそうでないかは」
「わからないんだね」
「人間の一生は短くてちょっとした先もな」
それもというのだ。
「わからないものなんだよ」
「一寸先は闇だね」
「そうだよ、人間その日は元気そのものでも」
「死んだりするね」
「朝死んでたりとかな」
「あるね」
極端なケースでも実際にある、僕は天理教の教会の人から昨日まで働いていた人が朝に血を吐いて急死した話を聞いたことがある。
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