八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第二百六十六話 秋田へその十
「僕は」
「そう言ってくれるか」
「うん、お酒は飲むけれど食べものは健康も考えているし」
それにだ。
「毎日少しだけでも寝てるよね」
「寝る時はしっかり寝る様にしてるさ」
「そうだよね、煙草も麻薬もやらないし」
「最後は絶対にしないっていつも言ってるだよ」
「そうだよね」
「あれは確実に身体に悪いからな」
麻薬程身体に悪いものはない、親父の口癖の一つだ。
「だからな」
「しないよね」
「心も壊れるしな」
「人間じゃなくなるとも言ってるね」
「だからな」
それでなのだ、親父は」
「俺は麻薬はしないんだよ」
「何があっても」
「煙草も吸わないしな」
「だったらね」
確かにお酒に女の人ばかりでもだ。
「最低限のことは守ってるから」
「俺は長生きするか」
「正直若死にする未来が思い浮かばないよ」
人間何時死ぬかわからないにしてもだ。
「親父の場合は」
「ははは、お前もそう思うんだな」
「百歳まで生きるんだね」
「そうするな、ただな」
「ただ?」
「俺は自分の子供や孫よりも早く死ぬな」
僕にこうも言ってきた。
「そうするな」
「百歳まで生きても?」
「親ってのは子供よりも早く死ぬものなんだよ」
そこに道理はなかった、そうしたものを抜いて絶対のものだというのだ。親父の言葉はここでも強かった。
「何があってもな」
「そうしたものなんだね」
「ああ、それで子供はな」
「親が死ぬのを見るんだ」
「そういうものなんだよ」
「だから今もそう言うんだ」
「俺はお前よりも早く死ぬな」
僕にそうすると言ってきた。
「何があっても」
「そうするんだ」
「お前もその時は爺さんになってるけれどな」
親父が百歳の頃には僕もそうなっている、その時の姿は想像出来ないけれど。
「それでもな」
「親父が死ぬのをだね」
「その時を見てくれよ」
「それじゃあね」
「あとな」
「あと?」
「お前の子供もな」
まだ結婚もしていない僕にこう言ってきた。
「俺が死ぬのを見るんだよ」
「それが僕と僕の子供の務めなんだ」
「ああ、あと俺の子供は一人だけれどな」
この時はこの言葉が最大の決め手になるなんて思わなかった、親父は僕に嘘を言わないことは絶対だからだ。
「お前は子供は何人欲しいんだ」
「三人はね」
天理教では子沢山の人が多い、それで言うのだった。
「欲しいよ」
「そうか、じゃあ四人は神様から頂けよ」
「数増えてるよ」
「こういうのは多く言うものなんだよ」
「そうなんだ」
「理屈抜きでな」
ここでも親父はそれを抜きにして僕に言ってきた。
「そういうものだよ」
「そうなんだ」
「ああ、だからな」
それでというのだ。
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