八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第二百六十六話 秋田へその八
「畑中さんが起こしてくれてな」
「そこまでだね」
「案内してくれるさ」
「朝早くだけれど移動手段あるかな」
「それはすぐにわかるさ」
親父は笑って言ってきた。
「朝になったらな」
「その時にだね」
「すぐにな、移動手段は何でもあるだろ」
「ああ、僕は電車を考えたけれど」
「電車だけじゃないんだよ」
「他にもだね」
「あるからな」
だからだというのだ。
「そこは安心しろよ」
「それじゃあね」
「ああ、あとな」
「あと?」
「お前今日はしっかり寝てろ」
こうもだ、僕に言ってきた。
「今からな」
「寝ないとだね」
「駄目だからな、もう寝ろよ」
「そうしてだね」
「明日に備えろよ、何だったらな」
今も声が笑っていた、そのうえで携帯の向こうにいる僕に言ってきた。この明るい口調が心を上向きにさせてくれる。
「秋田に行く途中でも寝ろ」
「とにかく寝ることなんだ」
「俺はあまり寝ないけれどな」
「遊んでね」
「寸暇を惜しんで遊んでるからな」
これも親父だ、とにかく遊び通している。そうして一生を駆け抜けるとも言っている。
「けれどな」
「僕はだね」
「寝ろよ、寝ないと早死にするしな」
「親父は早死にするんだ」
「太く短くだ、お前が大学卒業するまでは生きるけれどな」
それでもというのだ。
「俺は寝ないでな」
「遊び続けて」
「太く短くな」
笑ってこう言ってきた。
「百歳まで生きるな」
「百歳はどう見ても相当な長寿だよ」
「俺は百五十まで生きるって言われたんだよ」
やっぱり笑って言ってきた。
「昔な」
「誰から?」
「占い師の人にな、それで健康診断でもな」
「そう言われたんだ」
「いつも健康そのものだってな」
その様にというのだ。
「言われてな」
「それでなんだ」
「悪運もあるらしくてな」
このこともあってというのだ。
「百五十歳までな」
「生きるって言われたんだ」
「人間は百十五歳が寿命だろ」
「天理教ではそうだね」
「それよりも三十五年も長生きするって言われてるんだよ」
「凄いね」
「八条大の悪魔博士は二百歳って噂あるけれどな」
「あのお話本当かな」
二百歳とかもう仙人だ、流石に有り得ないと思いたい。
「江戸時代から生きているとか」
「俺も流石に信じられないけれどな」
「そうだよね」
「もう人間じゃないからな」
二百歳までいくとかだ。
「不老不死は現代医学では有り得ないからな」
「現代医学ではだね」
「これからはわからないぜ、医学も科学もどんな学問もあくまで今の時点で、だからな」
「今の時点の医学で全部は語れないんだね」
「脚気菌があると思ったらなかったしな」
森鴎外の話だ、森林太郎としてのあの人だ。
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