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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第二百六十六話 秋田へその七

「後ろを頼むぜ」
「後ろ?」
「いざって時の為に俺もいるけれどな」
「ああ、お医者さんだね」
 親父の仕事のことも思い出した。
「怪我をした人の手当ては」
「俺が受け持つし薬剤師の人も薬持って来てくれるけれどな」
「それでもなんだ」
「お前はいざって時の俺達のサポート頼むな」
「わかったよ、そういうことだね」
「ああ、頼むぜ」
 僕に陽気で強い声で話してきた。
「お前の仕事をやってくれよ」
「そうさせてもらうね」
 僕も親父にこう答えた。
「僕の出来ることを」
「ああ、あとこれは絶対に守れ」
「絶対に?」
「お前自分は暴力は嫌いだって言ったな」
「うん、言ったよ」
 実際にとだ、僕は親父に答えた。
「法律も理性もない力はね」
「あれは獣以下の力だな」
「そうだよね」
「獣、生きものってのは生きる為に戦ったり狩るんだよ」
 そうして自分の身を守ったり獲物を手に入れるのだ。
「それだよ、ライオンもペンギンもな」
「ペンギンもなんだ」
「そうだよ、ペンギンもな」
 この鳥もというのだ、空を飛ばないこの鳥も。
「獲物、魚を狩るのに滅茶苦茶特化した身体を持ってるんだよ」
「ああ、海の中で泳ぐ為に」
「物凄く泳ぎやすい身体をしてるんだよ」
「それで狩りをしているから」
「あれも力を使ってるんだよ」
「そうなんだね」
「けれど暴力じゃないんだよ」
 ペンギンが魚を狩るこの力もというのだ。
「生きる為に必要だから使う力でな」
「暴力じゃないね」
「ライオンもな、暴力は振るう必要がないのに振るう」
「法律も理性もなく」
「しかも自分より弱い相手をいたぶる為のな」
「そうした力だね」
「俺も暴力は嫌いだしな」
 それで絶対に振るわないと言っているのだ。
「それでお前もだ、今回も何があってもな」
「暴力はだね」
「それは振るうなよ、俺も絶対にそうするしな」
「何があってもだね」
「ああ、お前もそうしろ」
 僕に念押しして言ってきた。
「絶対にな、大丈夫だとわかっているが」
「それでも言うんだ」
「わかっていても念押しすると余計に確かになるからな」
 だからだというのだ。
「言っておくな」
「それじゃあね」
「そこは頼むな、動けない相手に何かすることもな」
 このこともというのだ。
「暴力だからな」
「振るわないことだね」
「暴力ってのはヤクザ屋さんの力なんだよ」
 親父は心から否定して述べた。
「俺は医者だ、医者もな」
「暴力は振るわないね」
「そしてお前もヤクザ屋さんになりたくないだろ」
「絶対にね」
「そう思うならな」
 それならというのだ。
「この言葉は心に刻み込んでおけ」
「そうさせてもらうね」
「俺が言うのはそのことだ、じゃあ明日な」
「六時に関西新空港だね」
「そこに来い、多分朝の暗いうちにな」
 もうその時間にというのだ。 
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