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八条学園騒動記

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第五百五十七話 昔ながらのラーメンその七

「普通鴨そばに薬味に何入れるかしら」
「この学園の鴨そばはお葱入れてるわね」
 春香はこの学園の食堂で食べたそれから話した。
「あれがよく合うわね」
「玉葱入れないわよね」
「お葱でしょ」
 入れるものはというのだ。
「ちょっとね」
「玉葱は違うっていうのね」
「鴨なんばとも言うじゃない」
「なんばがお葱ね」
「そう、お葱も入ってたけれど」
 その店の鴨そばはというのだ。
「玉葱もよ」
「入ってたの」
「それで食べたら」
「まずかったのね」
「お蕎麦はのびていて風味も悪くて」
「その時点で酷いわね」
「当然玉葱も合ってなくておつゆもね」
 こちらもというのだ。
「まずくて」
「最悪だったの」
「後味の残るまずさだったわ」
「ただまずいだけじゃなくて」
「そう、後味の残るね」
 そうしたというのだ。
「まずさだったわ」
「それは凄いわね」
「あんまりにもまずくて」
 それでというのだ。
「二度と行ってないわ」
「お金払ってまずいもの食べるとかないからね」
「もうその時あんまりにも頭に来て」
 ティンは炒飯を食べつつ言う、その炒飯は美味かった。
「お金払わないでね」
「お店出ようと思ったのね」
「だって本当に最悪の味だったから」
 それだけにというのだ。
「そうも思ったわ」
「お金は払わないと駄目でしょ」
 そこはとだ、春香は話した。
「やっぱり」
「それはわかってるけれど」
「あまりにもまずくて」
「それでね」
 そのせいでというのだ。
「お金払わないで帰ろうと思ったわ」
「お店の人が払えって言ったらどうするつもりだったの?」
「じゃあ払えるだけの味のお料理出せってね」
「そう言うつもりだったの」
「そうよ、まあ払ったけれどね」
「当然ね」
「けれどもう二度とね」
 それこそというのだ。
「行かないわ」
「そうするのね」
「実際に行ってないし」
 ティンの言葉は本気だった、彼女にとってその店はそこまでのまずさであり忘れられないものになっているのだ。
「もうね」
「いや、お話聞いていてね」
「わかるでしょ」
「そのお店のことがね」
「というかよくそれでお店続いてるわね」
「何でも出来て五十年で」
 それだけの歳月を経ているというのだ。
「昔からその味でも」
「今も続いてるの」
「この前親戚のお家行ったらあったから」
 実際にというのだ。
「お客さん入ってるみたいよ」
「そこまでまずくてもなの」
「不思議なことにね」
「本当に不思議ね」
「あんたもそう思うでしょ」
「心からね」
 春香もこう答えた。 
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