八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第二百六十四話 予感その八
「江戸の町人達は苦しみました」
「それで前の田沼時代の方がよかったとですね」
「詠った程です」
「濁れる田沼ですね」
実際の田沼意次は賄賂は殆ど貰わず出自にこだわらず能力で人材を使う人だったらしい。江戸時代は普通に付け届けがあったのでそれが賄賂とみなされたりもしたのだろう。それに政敵の喧伝もあったみたいだ。
「そう言われていましたね」
「完全な善を目指してもよくないですが」
「完全な悪でもですね」
「それが腐敗した邪悪なら尚更です」
「誰もいられないですね」
「そうです、そしてある程度の悪は必要悪としてです」
よく使われる言葉でも事実だろう、その匙加減が難しいにしても。
「それが過ぎますと」
「許してはならないですね」
「そうした悪にはある程度のです」
「正義ですね」
「それが来るものでして」
「その時がいよいよですか」
「迫っています、荒いことになるかも知れないですが」
それでもというのだ。
「止様は必ずです」
「ことを果たしますか」
「そのことをご覧になって下さい」
「わかりました」
僕は畑中さんにはっきりとした声で答えた。
「それじゃあ」
「その様に、ただ」
「ただといいますと」
「今年は寒くなりそうですね」
畑中さんはこんなことも話に出した。
「特に東北は」
「そういえば今年は何か」
「厳冬になるとですね」
「予報されていますね」
「東北は雪も多くなりそうです」
「あそこはいつもですけれどね」
冬はだ。
「今年はですね」
「記録的な。ですが」
「その寒さ、雪にですか」
「止様は勝たれます」
そちらにもというのだ。
「必ず」
「そうですか」
「雪に負けられる方ではないです」
そして寒さにもだ。
「ご安心下さい」
「親父はそうですね」
伊達に息子じゃない、親父がどういった人間かはわかっている。破天荒な親父だけれどそれだけにだ。破天荒に生きるにはそれだけの生命力が必要だ。
「生命力凄くて」
「前に前にですね」
「文字通り横紙破りで」
もうそんな要領でだ。
「いざとなれば突き進む人です」
「左様ですね」
「特に誰かを助ける時は」
何でも手術の時もそうらしい。
「そうですから」
「ですから」
「今年の冬がどれだけ厳しくても」
「止様は進まれます」
必ずという言葉だった。
「ですから」
「僕は安心してですね」
「見ていて下さい」
「そうしていていいですか」
「はい、そうされて下さい」
「親父は進んで、ですね」
「ことを果たされます」
こう僕に言ってくれてだ、こうも言ってくれた。
「義和様もご存知ですね、止様は進まれてことを」
「果たします」
「そうした方ですね」
「いい加減ですけれどね」
このことは事実でもだ。
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