八条学園騒動記
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第五百五十四話 美髪の秘密その十二
「だからね」
「隠しておられますか」
「結構必死にね」
カトリは笑って話した。
「そうしてるの」
「それはまた」
「ただ、背中のことは」
「最近まで、ですか」
「気付かなかったの」
そうだったというのだ。
[実はね」
「自分自身のことでも」
「そんなのだから」
「中々ですね」
「他人のことはね」
「余計にですね」
「中々ね」
長い付き合いでもというのだ。
「わからないものよ」
「そういうものですね」
「好きな食べものとかもね」
こちらのこともというのだ。
「わからなかったりするのよ」
「そうですか」
「そしてね」
「そして?」
「死ぬまで気付かないこともね」
「ありますか」
「そうだと思うわ」
こうティンに話した。
「実際のところね」
「中々難しいものですね」
「そうよね、人間は」
「何かと」
「本当にね」
「何か髪の毛から凄いお話になりましたね」
ティンはしみじみとした口調で述べた。
「今回は」
「そうね、ただね」
「ただ?」
「こうなるのも世の中でも」
「思わないお話をすることも」
「そのこともですね」
「ええ、そうだと思うわ」
カトリはコーヒーの残りを飲んでから述べた、見ればカトリだけでなくティンも残りのコーヒーを飲み干した。
「世の中よ」
「そうしたものですね」
「そう、それでね」
「それで、ですか」
「後はね」
「あっ、もうトルコアイスも食べて」
「お昼休み終わりだからね」
タイムリミット、その時間だというのだ。
「それでもよ」
「もう、ですね」
「コーヒーも飲んだし」
「後は、ですね」
「トルコアイスも食べて」
残っているそれをというのだ。
「そうしてね」
「午後の授業ですね」
「それに向かいましょう」
「わかりました」
ティンはカトリの言葉に頷いた、そしてだった。
二人でトルコアイスの残りを食べた、そうしてそれぞれの授業に赴いたのだった。
美髪の秘密 完
2020・1・2
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