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八条学園騒動記

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第五百五十四話 美髪の秘密その十一

「私もなの」
「先輩もですか」
「この前実家に帰ったらお母さんが髪の毛アップにしてて気付いたけれど」
 母の髪の毛が背中にまで生えていることにだ。
「まさにそのうなじが見えて」
「背中の入り口まで」
「それで私もうなじの方触ってみたら」
「背中の入り口まで、ですか」
「鬣みたいにね」
 カトリはまたこの表現を使った。
「そうした感じでね」
「髪の毛が背中まで、ですか」
「あの」
「そうなんですか」
「遺伝ね」
 カトリは笑ってこうも言った。
「これって」
「お母さんの」
「髪の毛の色も同じだし」
「金色ですか」
「純金色なの」 
「髪の毛の色も遺伝ですか」
「色は遺伝って知っていたけれど」
 それでもというのだ。
「まさかね」
「生え際までとはですか」
「思わなかったわ、あと実はね」
「実は?」
「私もお母さんも秘密があるの」
 カトリはくすりと笑ってティンにこうも話した。
「実はね」
「秘密?」
「子供の頃から気付いていたけれど」
「そのことはですか」
「お母さんのことに気付いて私自身のことにもね」
「やっぱり遺伝のことですね」
「そうなの、実は額が広いの」
 ティンに少しだけ声を小さくさせて話した。
「私は」
「お母さんの遺伝で」
「そうは見えないでしょ」
「はい、全く」
 カトリの額は彼女の前髪で完全に隠れている、その前髪も実に奇麗な純金の色である。きらきらと輝いてさえいる。
「それは」
「そうよね、けれどね」
「実は、ですか」
「私額が広くて」 
 それでというのだ。
「禿と言えばね」
「そうなりますか」
「そこまでね」
「額が広いんですか」
「だからお母さんいつも隠してるし」
「先輩もですか」
「そうしてるの、密かにね」
 カトリはここでこんなことも言った。
「ユリウス=カエサルの気持ちもわかるわ」
「あっ、古代ローマの」
「エウロパ最大の英雄の一人ね」
「凄く悪い奴ですよね」
「ええ、けれどね」
 連合ではエウロパの偉人は例外なく悪人になる、それでカエサルもそうなるのだ。
「カエサルって薄毛だったでしょ」
「前からきてたそうですね」
「そう、だからね」
「先輩も額のことで」
「カエサルの気持ちがわかるわ」
「そうなんですか」
「だからあの人の悪口は言わないの」
 連合では大悪人とされていてもというのだ。
「ついついね」
「額のことがあって」
「どうもそれ以上後退しないみたいだけれど」
「お母さんがそうですか」
「お母さんが言うには子供からそうで」
「今もですか」
「その広さだっていうしお祖母ちゃんもね」 
 この人もというのだ。
「母方のね」
「つまりお母さんのお母さんですね」
「そのお祖母ちゃんも額広くて純金の髪の毛で」
「三代続けての遺伝ですか」
「やっぱりお祖母ちゃんも背中まで髪の毛があって」
 このことも遺伝だというのだ。
「額もなの」
「本当に遺伝ですね」
「そうよね、それでね」 
 カトリはさらに話した。
「額のことはね」
「秘密ですか」
「そうしてるの」
「そんなに、ですか」
「実は結構な高さまであるの」 
 頭、そこのというのだ。 
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