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八条学園騒動記

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第五百五十四話 美髪の秘密その六

「思います」
「そうよね」
「というか生きていた時に物凄く酷いことをしたら」
「浅ましいね」
「餓鬼になるんですね」
 死んで生まれ変わる時にというのだ。
「そうなんですね」
「そう言われているわね」
「凄いお話ですね」
「ええ、ただね」
 ここでだ、また言ったカトリだった。
「自業自得でも苦しんでいることはね」
「事実ですね」
「だから仏様は餓鬼にも慈悲が必要と仰っているのよね」
「そうなんですね」
「その辺り凄いわね、私仏教も信仰してるけれど」
 その宗派は小乗仏教である。
「そちらにはね」
「そうした考えがありますか」
「そう、例え悪いことをしても」
 それでもというのだ。
「慈悲を忘れない」
「それが仏教ですか」
「そうなの、ただね」
「ただ?」
「餓鬼の髪の毛は本当に酷いわね」 
 ここでだ、こうも言ったカトリだった。
「言われてみれば」
「そうですよね」
「やっぱり生活が悪いとね」
「髪の毛も悪くなりますね」
「髪の毛も栄養だから」
 それが大いに関係するかだというのだ。
「それでね」
「それで、ですね」
「碌に栄養を摂ってないからね」
「髪の毛がごっそり抜けていて」
「残った髪の毛もね」
 こちらもというのだ。
「ぼろぼろなのよ」
「餓鬼の絵ってそうですよね」
「絶対にね、そう思うと」
 本当にというのだ。
「髪の毛は丁寧な洗い方、拭き方とね」
「規則正しい生活ですね」
「それが第一よ」
「そうですね、ちゃんと食べて」 
 ティンはさらに話した。
「ちゃんと寝ることですね」
「餓鬼って寝てるのかしら」
「寝てないですよね」 
 即座にだ、カトリは話した。
「どう見ても」
「いつも餓えと渇きに苦しめられていて」
「それでね」
「寝てないですね」
「全然寝てなくて」
 それでというのだ。
「余計に身体の調子が悪いのね」
「そうですよね」
「だから本当に髪の毛がないのね」
 残った髪の毛も非常に悪いものになっているのだ、そもそも健康そうな餓鬼がいればそれは餓鬼ではないかも知れない。
「そういうことね」
「そう思うと餓鬼は可哀想ですね」
「そうね、食べないで寝ないで」
「しかも」
 ティンは餓鬼のことをさらに話した。
「お腹の中に寄生虫がいますね」
「大勢ね、しかもね」
 カトリはティンに餓鬼の腹の中にいる虫達の話をした。
「只の寄生虫じゃないのよ」
「人や他の生きものにいる虫じゃないですね」
「蜂とか百足とかゴキブリとかね」
「そういうですね」
「普通の寄生虫じゃなくて」
「しかもですね」
「お腹の中で暴れ回って刺したり噛んだりするから」
 それが餓鬼の中の寄生虫だ、主を常に苦しめているのだ。 
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