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夢幻水滸伝

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第百二十四話 台風とその十六

「そうだよな」
「そうだよ、白米だけだとね」
「脚気になるよな」
「けれどそれがね」
「麦飯だとな」
「脚気にならないんだよ」
 こちらを食べると、というのだ。
「だからいいんだよ」
「そうだよな」
「それにお味噌汁は豚汁だろ?」
 麻友は幸田にこのことも話した。
「お漬物も色々出して」
「梅干しとか沢庵とか菜っ葉のとかな」
「そうしてね」
「ちゃんと栄養考えてたんだな」
「戦の前こそね」
 それこそとだ、麻友は幸田にしっかりとした口調で話した。
「ちゃんとしたもの食べないと駄目なんだよ」
「そうだよな」
「だからね」
「麦飯のお握りにか」
「豚汁だったんだよ」
「それにお漬物か」
「これだけあったらね」
 それこそというのだ。
「ちゃんとした栄養補給になるからね」
「だから余計にだな」
「あたしも考えたんだよ」
「手早く美味くか」
「それでちゃんと栄養補給出来るか」
「そういうのを考えてってことか」
「この献立なんだよ」
 麦飯のお握りに豚汁、漬物だというのだ。
「そしてお茶だよ」
「それもだな」
「お茶も身体にいいからね」
 だからだというのだ。
「棟梁さんにお話してね」
「用意してもらったんだな」
「そうなんだよ」
 まさにというのだ。
「あたしも考えたからね」
「戦の前の飯には何がいいか」
「あとカレーもね」
 こちらもというのだ。
「考えてるからね」
「そっちもか」
「手早く美味しくね」
「それで栄養補給も出来るか」
「それでね」
 こうした長所を踏まえてとだ、麻友は幸田に対して自身の職業である料理人の立場から確かな口調で話した。
「カレーライスの時はゆで卵とキャベツの酢漬けもね」
「出すんだな」
「そう考えてるよ」
「栄養も大事ってことだな」
「一品一品の味とそれぞれの料理の組み合わせとね」
「色々考えてか」
「戦の前も食べないとね、それでね」
 麻友は幸田にさらに話した。
「今日はそれだったんだよ」
「麦飯と豚汁ってことだな」
「それとお漬物でね」
 それでというのだ。
「食べてもらったからね、ただお握りに海苔は巻いたけれど」 
「どうしたんだよ」
「中に梅干しは入れなかったんだよ」
「おかずで出てるからか」
「それでね」
 まさにその為でというのだ。
「入れなかったんだよ」
「それでだったんだな」
「けれどおかずで出したから」
 それでというのだ。
「よかったよね」
「ああ、美味かったぜ」
「やっぱりお握りには梅干しだよ」
 明るく笑ってだ、麻友はこうも言った。
「この組み合わせは欠かせないからね」
「だからか」
「出したんだよ、じゃあね」
「飯も食ったしな」
「戦に入ろうね」
 麻友も前を見た、もう敵の移動要塞が台風の嵐の向こうに見えていた。暴風の音がその耳に入ってきていた。


第百二十四話   完


                   2019・8・1 
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