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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第二百五十九話 思わぬ人その二

「明日からね」
「まただね」
「学校ね」
「そうだね、ただね」
「ただ?」
「明日日曜だから」
「あっ、お休みね」
 詩織さんは言われて気付いた、そうしたお顔だった。
 ここでだ、こう言ったのだった。
「ならね」
「なら?」
「今日打ち上げでお酒出るから」
 キャンプファイアーの後でというのだ。
「もうお酒をね」
「二日酔いになる位になんだ」
「飲んで」
 そしてというのだ。
「全部終わらせるわ」
「お酒飲むんだ」
「もうね」
 それこそというのだ。
「記憶なくなるまでね」
「それはいいけれど」
 僕も飲むつもりだ、だからそれはいいとした。けれど詩織さんにこう言うことも忘れなかった。そう言わないと駄目だと思って。
「急性アルコール中毒には気をつけてね」
「飲み過ぎにはね」
「たまに出るらしいから」
 文化祭の後の打ち上げでだ。
「もう溺れる位飲んで」
「それでなのね」
「そこまでなる人がね」
「過去にいたのね」
「誰かいたらしいよ」
「義和の知ってる人じゃないわよね」
「うん、僕のお祖父さんが言ってたんだ」
「義和の」
「何か七十年位前にね」
 お祖父ちゃんが学生時代よりもさらに前のことだ。
「当時のお酒飲んでて」
「当時っていうと」
「終戦直後の」
「あっ、それって」
 終戦直後のお酒と聞いてだ、詩織さんは目を顰めさせて言った。
「メチレンよね」
「カストリだっていうんだ」
「それでしょ」
「そういえばその時代だね」
 僕も言われてこのことを思い出した。
「当時は」
「そうでしょ」
「悪いお酒も出回っていて」
「何かとね」
「それで、でしょ」
「そのカストリ飲んでだね」
 終戦直後は質の悪いお酒も出回っていた、少し飲んだだけで死にかねないとんでもないお酒だった。
「倒れたんじゃって」
「メタノール入ってたのよね」
「その頃のお酒にはね」
 そうしたお酒が本当にあった、これは飲んだら死ぬアルコールだ・
「それが原因でね」
「飲んだら命落としてたのよね」
「それかな、終戦直後はね」
 それこそだ。
「色々あったからね」
「そうよね」
「ものがなくて」
「お酒にしてもね」
「まともなお酒が少なくて」
「それでもお酒って皆飲みたがるから」
「もう飲めればいいってなって」
 それでだったのだ。 
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