| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

八条学園騒動記

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第五百五十一話 ノーダメージクリアその五

「孤独だったけれど」
「ベートーベンはどうだったの?」
「沢山の敵に囲まれていて」
「それでだったのね」
「孤独だったのよ」
「同じ孤独なら」
 それならとだ、エイミーは次姉の話を聞いて言った。
「お友達に囲まれている方がいいわね」
「そうよね、誰でも」
「ベートーベンはそんな人だったのよね」
「何しろ自分の音楽は万人がひれ伏すものと思っていたから」 
 そう確信していたのだ。
「誰にも頭を下げなかったのよ」
「コミュニケーション能力なかったのね」
「全くなかったわ」
 ジョーはあっさりと答えた。
「何一つね」
「そうよね、そんな人がね」 
 それこそとだ、エイミーも言った。
「コミュニケーション能力ある筈ないわね」
「それでとんでもなく頑迷で」
 頑固どころかだ。
「気難しくてね」
「ナポレオンが皇帝になって楽譜破り捨てたのよね」
「そんなこともしたし」
 『英雄』の時の話だ。
「気難しい人だったのね」
「かなりね、しかも頑迷さも」
「相当で」
「尚且つとんでもない癇癪持ちで」 
 つまり性格的に問題がある部分がどれも極めて高いレベルにあったのだ、こうした場合の高レベルはいらないであろうが。
「ピアノ教室を開いていて子供にすぐもの投げて」
「今だとその教室即刻閉鎖ね」
 ベスもその話を聞いて言った。
「間違いなく」
「そうよね、お家の使用人さん達にもすぐ怒って」
「それでもの投げてたのね」
「癇癪起こして」
 そしてとだ、ジョーはベスにもベートーベンのことを話した。
「そしてね」
「もの投げたのね」
「卵投げたりしたらしいの」
「生卵?」
「それをね」
「食べものを粗末にしたら駄目よ」 
 ベスはジョーの話に即座に言った。
「絶対にね」
「私もそう思うわ」
「絶対にね」
「ベートーベンさんって問題あり過ぎね」
「それでそんな人をね」
「サリエリさんは推挙したの」
「そうだったのよ」
 ジョーは妹達にあらためて話した。
「それでベートーベンさんは世に出たのよ」
「そうだったのね」
「というかそんな人を推挙出来るとか」
 エイミーは腕を組んで言った。
「サリエリさんって凄くいい人?」
「私もそう思うわ」
 ジョーは末妹に真剣な顔で答えた。
「そんなとんでもない人を推挙出来るとか」
「聖者クラスの人よね」
「音楽的才能はあっても」 
 このことは事実でもだ。
「人間としてはね」
「むしろモーツァルトさん以上にね」
「とんでもない人だったから」
「清廉潔白で公平で流されない人ではあったわ」
 こうした多くの美点も有名で偉人伝では常に書かれている。
「苦難に打ち勝ってね」
「耳が聞こえなくなっても作曲を続けて」
「そんな一面もあったれど」
「そうした欠点がとにかく凄かったのね」
「そんな人だったから」
 それでというのだ。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧