ようこそ、我ら怪異の住む学園へ
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其の弐 蛇を宿した女
第十話 依頼
「この問題は、この公式を使って解くんだ。ここに数字当てはめて———」
「ふむ、今の人間はこんな勉強をしているのだな……だがいらん、軟弱すぎる。全て捨ててしまえ」
『頑張ってください! 私も応援してますよ、元宮様‼︎』
『僕もですよ、元宮様! 頑張れ‼︎』
……この教室、今授業参観開催中でしたっけ。
僕の机の周りを囲むように立って、鬼神様とアイカさん、ヒロトさんがノートを覗き込んでくる。
おかげで目の前が塞がれてしまって、黒板が見えない。多少アイカさんとヒロトさんの姿は薄いものの見えにくいのだ。
というか、この状態で指名されてしまったらかなりまずいのだが……
「———えー、ここ。元宮、わかるか?」
うん、どこですか。
一度立ち上がってみるが、丁度問題が書いてあるであろうところにヒロトさんが居て、問題すらわからない。
そんな状態で何をしろと。勘で当てられるわけがないのに。
「ヒロトさん、退いて、退いて……!」
小声でそう言うも、ヒロトさんの興味は他の生徒に言ってしまっているようで。
その場から動かずに、隣の席である朔楽ちゃんのノートを見ている。いや、見るなら退いてよ。
と言うことで、ですね。
「……分かりません」
「反応おっそいなー、テンポよくっ! はい‼︎」
「分かりません‼︎‼︎」
ヒロトさんへの妬みを込めて、僕は叫んだ。
「いやあ、笑った笑った。いきなり叫びだすものだからねえ」
「やめてください思い出させないで」
怪異と縁ができるというのはこういうことなのか、というのを知った授業だったなぁと、元宮は思い返す。
気を取り直して、現在図書室の奥の部屋。四番目と元宮は話していた。
「さて、今日君を呼び出したのは、また頼みがあるからだ。聞いてくれるね?」
すぐに元宮は答えなかった。これで断ったとしたらどうなるのか。それが知りたかったのだ。
断ったら、自分は飽きられて殺されるのだろうか。それとも、無理矢理引っ張られてでもどこかへ連れて行かれるのか。
どちらでもいいのだが、気になってしまったのだから仕方ない。
暫くしてから、元宮は「はい」という意味を込めて、首を縦に振った。
「よし。今回は『蛇を宿した女』という噂の怪異だ」
聞いたことがある噂に、元宮は頷く。
「あの、旧校舎の二階の七不思議ですよね。最近有名になってきてますよ」
「うん。今回はそいつを退治しに行く。なんでも、犠牲が出ているらしくてね」
「だめです‼︎‼︎」
急に叫ぶ元宮だが、数回のうちに慣れてしまったのか、もう四番目は驚かない。
こいつはいきなり発狂しだす精神が不安定な奴なんだな、と流すから。
「退治はだめ! また噂を改変しますから」
元宮は、刃を向けられても逃げ出さないくらいの覚悟を持っている。
何か長ったらしい台詞を言ったくらいで意見が変わるほどの、生半可な覚悟ではない。
四番目は一度溜息を吐いてから、「はいはい」と軽く返す。
「死なない程度に好きにしろ。君を殺すのは私だからな」
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