ようこそ、我ら怪異の住む学園へ
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其の弐 蛇を宿した女
第九話 蛇女の噂
「———えーっとな?」
キャー、と外で歓声が上がっている。
空は段々と茜色に染まり始めていて、普段は人気がある旧校舎だが、今となっては人の気配はない。
そんな旧校舎の、とある空き教室に人影が二つ。
「進路。提出してないの、お前だけ」
一枚の白紙のプリントを手に取り、もう一人の目の前に突きつける教師。
そのプリントを静かに受け取ったのは、気難しそうな表情をして黙り込む女生徒。
「何もなりたいものとか決まらなかったら、親とか俺に、しっかりと相談するんだぞ」
教師からそれを受け取ると、女生徒は足早に空き教室を後にする。
高校生活をしっかりと満喫したいからなのか、それとも用事があるのか。
いや、旧校舎のこの階には、今とある噂があるからなのかもしれない。
女生徒が廊下を歩いていると、一つの違和感に気付く。
———あれ? 廊下って、こんなに長かったっ
———昔々、戦争があった時代。この近くにはとある研究所があった。
そこでは、人間数千人にさえ勝る、“異形の兵士”を作る研究がされていたらしい。
人体実験には何百もの者が犠牲になったという。
その中で一人だけ、成功してしまった者がいたのだ。
奴は女だった。だが、その身に蛇を宿したんだ。
上半身こそ人間のままだったが、下半身が大蛇のような姿に成り果てていた。
一時は実験の成功に喜ぶも、奴はその場にいた研究員全てを惨殺した。
その後も犠牲が多々出るものだから、兵士数十人がかりで、やっとの思いで仕留めたのだという。
だが、そうやって殺されたものだから、奴は怒った怒った。
今でも旧校舎の二階の廊下に現れては女を惨殺しているんだって。
研究員と女共を重ねて、恨みを晴らすように、何人も、何人もね。
それが、この学校の七不思議が六番目『蛇を宿した女』、さ———
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