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八条学園騒動記

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第五百四十八話 姉妹の名前その五

「本当に特別な事例ね」
「あの博士自体特別じゃない」
 ジョーはベスにこう言った。
「もう」
「それはね」
 ベスも否定しなかった。
「あの博士の場合は」
「法律一切無視してるでしょ」
「まさに己が道を行く人で」
 殺人も生態実験も躊躇せずに行う。
「堂々と研究所置いてね」
「それで悪の限り尽くしてるわね」
「その辺りのチンピラ捕まえて生体実験やったり」
「大量破壊兵器の建造もしてるでしょ」
「街に出たらチンピラ殺すし」
「平気でね」
「ああした人は」
 ベスはあらためて言った。
「本当に特別ね」
「建前と本音も」
 それがそれぞれ違うこともというのだ。
「やっぱりね」
「普通は違うものね」
「そうよ、世の中は」
「だから南北戦争もそうだったのよ」
 メグはここでまた妹達に話した。
「奴隷解放の為ということはね」
「二番目なのね」
「それは確かにあったけれど」
「建前ね」
「そう、建前であって」
「本音は経済なのね」
「北部は工業が発展してきていて」
 産業革命、アメリカでもそれが起こってきていたのだ。そしてそれが後にアメリカを世界一の大国にしていく。
 メグはエイミーと話してジョーとベスにも話した。
「南部は農業でね」
「そっちだったのね」
「そしてね」
 それにというのだ。
「イギリスとかも排除したかったし」
「欧州、今のエウロパね」
「そのこともあって」
「南北戦争に至ったの」
「ここで奴隷解放を言ったら」
 この建前を出すと、というのだ。
「人道的にってなるわね」
「もうその頃から奴隷は駄目だったのよね」
「そうなってきていたから」
「だからなのね」
「それを掲げて」
 そうしてというのだ。
「欧州の介入をなくしたのよ」
「欧州で奴隷は駄目って考えになっていたから」
「それまではあったわ」
 欧州各国に奴隷制度が存在していたというのだ。
「けれどその考えが変わって」
「奴隷は駄目ってなって」
「アメリカでもそうなってきていたから」
「丁度よかったのね」
「そう、けれどね」
「その実は」
「経済、産業のことだったの」
「何か現実はシビアね」
「連合なんかもっと凄いでしょ」
 今自分達が暮らしているこの国はというのだ。
「もうね」
「もう建前は建前で」
 ジョーは姉のその言葉に頷いて言った。 
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