八条学園騒動記
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第五百四十八話 姉妹の名前その二
「他の作品ではね」
「死んでなかったりするのよね」
「そうよ、舞台にもミュージカルにもアニメにもなってるけれど」
この作品が世に出て千年以上そうした創作にもなり続けている。
「ベスが死なないことが大抵よ」
「やっぱり誰か死ぬってことは」
「四姉妹の中でね」
「それはどうかってなって」
「ベスも死なないし」
ジョーはベスにさらに話した。
「お姉ちゃんのご主人もね」
「お姉ちゃんって」
「だから長女さんの旦那さんも」
メグの名前がそのままなのでだ、ジョーは呼び捨てにすることを憚ってそれであえて姉と呼んだのだ。
「死なないのよ」
「そうなのね」
「そう、だからね」
それでというのだ。
「あんたも気にすることはないのよ」
「あくまで原作だけね」
「十九世紀中頃は」
ジョーは若草物語のその時代の話もした。
「医学も未熟で」
「それでなのね」
「人ってすぐに病気でね」
「死んだりしたのね」
「そうよ、子供なんて」
特にというのだ。
「昨日元気でもね」
「あっさりと死んだり」
「そんな風だったから」
それでというのだ。
「姉妹も四人いてね」
「誰かいなくなったりとか」
「普通にあったのよ」
「そうだったのね」
「今とは違うから」
医学、それがというのだ。
「だからね」
「ベスが死んだことも」
「普通にあったことなのよ」
「そうなのね」
「原作の時代ではね」
「そういうことね」
「というかね」
ここでメグも言ってきた。
「当時のアメリカって南北戦争してたでしょ」
「そうそう、アメリカの唯一の内戦ね」
ベスは長姉のその言葉に応えた。
「アメリカが南北に分かれた」
「その内戦の時代で」
「四姉妹のお父さんも戦争に行ってるのよね」
「あの作品はそのお父さんを待つ作品でもあるから」
その時期に生きる四姉妹を書いた作品であるのだ。
「あの戦争激しくてね」
「沢山の人が死んだのよね」
「そんな戦争だったから」
それでというのだ。
「人の命はね」
「余計にだったのね」
「すぐに死んだのよ」
病気だけでなく戦争のこともあってというのだ。
「人はね」
「そうした時代だったのね」
「だからお父さんも何時死ぬかわからなかったし」
戦死という形でというのだ。
「ベスもね」
「死んでもなのね」
「悲しいことだけれど」
姉妹の誰かがそれも若くして亡くなることはだ。
「けれど当時はね」
「それが現実だったのね」
「そうだったのよ」
「シビアな時代ね」
「病気は今もあるけれど」
エイミーも言ってきた。
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