ワールドトリガー~希望の架け橋~
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第6話
9月4日 ボーダー正式入隊
本日は待ちに待った正式入隊日である。
たくさんの訓練生が入隊式を受けるためロビーへと移動していた。
海斗もその一人である。
「悪いな、奈良坂。来てもらっちゃって」
「いや、気にするな。俺がそうしたいだけだから。辻も来たがってたけど、あいつは防衛任務だからな」
「そうか、辻には昨日お世話になったからな。」
「というか、奈良坂お前、目立ちに目立ちまくってんぞ」
それもそのはず、訓練生の白い隊服の中に六頴館の制服が1人。
周りも気づいたのか、ひそひそ声が聞こえている。混乱を巻き起こしている当の本人は無表情だが。
「ボーダー本部長、忍田真史だ。君たちの入隊を歓迎する。」
本部長の挨拶が始まった。本部長を見るのは、面接以来となる。
「(相変わらず、オーラが違うなぁ)」
「・・・・・・・君たちとともに戦える日を待っている!!」
本部長の話が終わり、いよいよ入隊の説明を嵐山隊がしてくれることになった。
嵐山隊が出てくるとミーハー如くざわついた。
「なかなか人気なんだな。俺はまだテレビで見たことないけど」
「・・・まぁ広報部隊だからな。さすがに全国出演はまだないみたいだから神崎は知らないかもだけど。」
しかし、訓練生の中にはなめている人もいるみたいだった。
「・・・・まだ、何もしてない俺たちがあーだこーだ言える資格ないと思うんだけど」ボソ
「あんなこと言っている奴で上に行けた奴なんかいないんだから気にしなくていいんじゃないか?」
わぁお、毒舌
「これからオリエンテーションを始めるが、まずはポジションごとに分かれてもらう。アタッカーとガンナーはここに残り、スナイパーは佐鳥に続いて訓練場に移動してくれ」
ガヤガヤ
スナイパー希望の人が移動していく。
スナイパーがいなくなったところでオリエンテーションが始まった。
「改めて、嵐山隊の嵐山准だ。まずは入隊おめでとう!!忍田本部長も言っていた通り君たち訓練生はB級に上がり正隊員になるまで防衛任務には参加できない。ではどうすればB級に上がれるのか、各自左手の甲を見てくれ。君たちが起動しているトリガーホルダーにはあらかじめ自分で選んだトリガーが一つだけ入っている。左手の数字は君たちがどれだけそのトリガーを使いこなしているか表している。
そのポイントを4000まで上げること。これがB級への条件だ。ほとんどの訓練生が1000ポイントからのスタートだが、仮入隊の際に高い素質が認められればポイントが上乗せされてスタートされる。ポイントを上げる方法は二つある。一つ目は週2回の合同訓練でいい結果を残し続けるか、ランク戦で勝ち続けるか、まずは訓練からの体験となる。ついてきてくれ」
「自分のポイントは・・・・・・2350からか」
「かなりいいんじゃないか。昨日の一回のみでこのポイントをもらったんだから。」
「ほぉ、そうゆうものなのか」
カツカツカツ
「奈良坂先輩」
「?木虎か・・・」
訓練場に行く道の最後尾を歩いていると突如奈良坂を呼び止めたものがいた。
「何故スナイパーであるあなたがここに?」
相変わらずの態度だと内心思いながら紹介する」
「友人の付き添いだ。俺のことは気にしなくていい」
「気になります!!白い隊服の中一人制服なんですから」
「ん?確か嵐山隊の・・・」
奈良坂は内心しまったと思った。木虎はA級というプライドからなのか誰彼構わず突っかかるところがあった。ましてや海斗はC球である。どんな言葉を浴びせるのかひやひやしていた。
「ふん。木虎です。この後の訓練はせいぜい気を抜かないようにね」
「あぁ、忠告感謝するよ。」
「!!あなたの戦い。、見させてもらいます。では、失礼します」
そういい木虎は去っていった。
そして、訓練室に到着した。
「まず、初めに行う訓練は対ネイバー戦闘訓練だ。ボーダーの集積データから再現されたネイバーと戦ってもらう。」
ざわざわ
「いきなりかよ。」
「うそだろ!!」
「いやいやいやいや」
C級から動揺が広がる。
「ふむ、いきなり戦闘訓練とは。」
「これで、戦闘に向いているか否かを判断するってわけか」
海斗と奈良坂も驚いていたが、冷静に分析していた。
それを遠くから木虎、時枝が遠くからその様子を見ていた。
「木虎、あの先輩のことが気になっているみたいだね。」
「そ、そんなことないです!!あの奈良坂先輩がわざわざアタッカーの訓練に付き添いするような人だから気になっただけで」
「(気になってんじゃん)木虎が嫌味を言わなかったのがあまりに珍しかったからね」
「な!?別に年下、年上関係なく私の言葉に耳を傾けてくれたからです。彼がB級に上がったら戦ってみたいとも思いました。」
「(へぇーあの木虎がねぇ)」
こんな話があった中
「仮入隊の時に経験した者もいるみたいだが、仮想モードではトリオン切れはない。思う存分戦ってくれ。今回戦ってもらうのはみんなも見たことがある。大型ネイバーだ。訓練用に少し小型化してある。攻撃力はないがその分装甲が分厚いぞ。制限時間は1人5分。短い時間で倒すほど評価点は高くなる。自信があるものは高得点を目指してくれ!!では各部屋始めてくれ!」
そこから訓練生が順番に戦闘し始めた。
まだまだ出番が来ない海斗は素朴な疑問が口につく
「んー?これって、大体どれくらいのタイムが出せればいいんだ?」
「自分は狙撃手だから何とも言えないが・・・・新人が行っていることを考えれば1分を切ればいいんじゃないか?」
「なるほど、あ、46秒。なら今の人はそこそこできる人なんだな」
「あぁ(まぁお前の方がいいタイムたたき出せると思うんだがな)」
仮入隊時、10秒というタイムをたたき出したことを知っている奈良坂は思ったが口には出さなかった。
海斗の番になれば否でも全員が分かることだと思ったからだ。
まだ、海斗が奈良坂のクラスに転校してきて日は浅いが、すでに心から信頼していた。奈良坂にしてはものすごいことである。
「結構空いてきたな、じゃあそろそろ並んで来ようかな。」
「あぁ、実力出し切ってこい」
そう言葉を交わし、海斗は移動した。
「奈良坂先輩」
「ん?今度は時枝か。」
「さっきは木虎が来たんですよね。」
「あぁ、神崎に何か言わないかひやひやさせられたがな」
「すみません。でも、まだ戦っている姿を見る前なのに見下すような感じではなくB級に上がったら戦ってみたいといっていた。木虎にしては珍しい。」
「なるほどな。木虎の期待に応えられそうだと伝えておいてほしい。」
「!?奈良坂先輩もなんか変わりました?」
「そうかもしれないな。」
「で、彼どのくらいのタイムになると思いますか?」
「さぁな。予測はつかないな。」
そろそろ、海斗の番になりそうだ。
仮想戦闘ブースを動かしているのは諏訪隊である。
「今期の新人、パッとしねぇな。46秒が最高か・・・」
「一時期の新人がすごすぎただけでしょ?黒江が11秒、木虎が9秒、緑川なんて4秒ですよ。そいつらと比べるのはさすがにかわいそうじゃ」
こんな話をしている中、いよいよ海斗の出番が回ってきた。
「じゃぁ、次」
「よろしくお願いします」
「(さて、次の人はどうかな)」
近くでは嵐山が見つめていた。
そして
「!!」
「あ、神崎の出番だ」
「・・・・・」
木虎と時枝、奈良坂が海斗のいるブースを見つめていた
「(仮入隊の時と大きさ、ネイバーの種類は変わらないか)」
弧月を抜き、戦闘態勢に入る
『戦闘、よーい 始め!!』
トン
ビュン
スタッ
「「「「な!!」」」
『記録 2秒』
「嘘だろ!!」
「まじで!!」
「そういや、あの人仮入隊の時見たことあるかもしれない!!」
諏訪隊は・・・・・
「あ・・・・・」ポロ
「よかったですねー諏訪さん。あっとおどろくことが見れて」
「驚くどころか2秒だぞ、最短記録更新しちまったんだぞ!!」
「すごい・・・・・・・」
同じく時枝も唖然として見つめていた。
「・・・・神崎は昨日だけ仮入隊に参加していたんだが、そのときに初めてまじかでトリオン兵を見たんだ」
「初めて・・・・?あの種類はよく見るトリオン兵ですが」
「神崎は小5まで三門にいたがそれ以降は親の都合で県外に居住を移していたから大規模侵攻時もニュースでしかトリオン兵は見たことなく、しかもあいつが正式に三門に戻ってきた日は8月30日だ。それまでトリオン兵に遭遇したことなくても不思議じゃない。まじかで見るのと画面越しに見るのとじゃ迫力も違うだろうしな」
「なるほど」
「仮入隊時に初めて戦闘をした時のタイムが10秒だった。さらに、訓練室ブースにいるとき冷静に敵の弱点を分析していたらしい。かなりの頭脳派だ」
「!!それは、すごい」
「まぁ、あいつは編入試験を前人未到のオールパーフェクトで合格するくらいの頭脳を持っている。」
「それは何とも・・・・見る限りだと相当の運動神経も持っているみたいですし。とんでもない逸材が入隊したかもしれないですね」
「あぁ・・・」
奈良坂は友人の最高のパフォーマンスを見れてかなりご満悦な様子である。
時枝は普段無表情の奈良坂のわかりやすい表情を見てかなり驚愕していた。
「(奈良坂先輩をこんな表情にさせる神崎先輩はただものじゃないですね)」
三雲サイド
自分はトリオンが少ない、それもあって一度試験を受けた時には不合格だった。だけど、千佳を守るためにはボーダーに入るんだと追っていた時にトリオン兵に襲われた。
その時に名前もわからないボーダー隊員に救われその人の計らいなのか何とかボーダーに入ることができた。
そして入隊日にいきなりのネイバー戦闘訓練。自分の武器はレイガスト。自分の番が回ってきたため持てる力を出そうと生きこんでいたのだが・・・・・
「・・・・・・・・・・・」ズーン
結果は大きさや防御に意識を先過ぎて攻められずタイムオーバーだった。
散々な結果にうつむいた顔を上げることができない。
幸いなことに回りも自分のことでいっぱいなのか友人たちと結果を言い合っているためこちらに目を向ける人はいなかった。
少し落ち着いて顔を上げる。まだ全員は終わっていないため目についたブースに目を向けた。
そこでは自分よりも背が高い男の人がネイバーと向かい合っていた。自分よりも年上。高校生だろうか。
「(構えているのは確か、弧月)」
<よーい、始め!!>
トン
ビュン
スタッ
<記録 2秒>
「!!」
一瞬にして静寂に包まれた。そしてざわめきが大きくなった。
三雲は唖然とした。
そしてこの日のことを忘れないだろう。
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