八条学園騒動記
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第五百四十二話 朝早くだったのでその十三
「否定出来る筈がなかった」
「皇室は神道の総本山なので」
「うむ、日本の皇室は仏教も信じるが」
「それと共に、ですからね」
「帝は出家もされるが」
ただしこれは近代以降はない、平安時代から長い間このことは普通であってもそこは変わったのだ。
「しかしな」
「神道についてはですね」
「決しておろそかに出来ぬ」
「その神事も」
「そしてその皇室を脅かすことはな」
「比叡山も出来なかったですね」
「逆らうことは出来た」
これは可能だったというのだ。
「だから鳥羽法皇もな」
「どうにもならぬと言われたんですね」
「左様、しかしな」
皇室に逆らうことはあってもというのだ。
「皇室を潰すことはな」
「出来なかったんですね」
「流石にな」
そこまではというのだ。
「出来なかったしのう」
「比叡山はバチカンと違いますか」
「バチカンはそれこそじゃ」
「自分達が絶対だとですね」
「定めていてじゃ、皇帝さえもな」
神聖ローマ帝国皇帝だ、ローマ帝国つまり欧州の統治者とされていたがその皇帝に帝冠を授けるのもバチカンの主であるローマ教皇だったのだ。
「逆らうことは難しかった」
「逆らうと厄介なことになりましたね」
「そして信仰ではな」
「絶対でしたね」
「だからじゃ、権威も違い自分達が絶対なら」
「他者、他宗教はですね」
「他宗派もな」
これにはカタリ派やプロテスタントがある。
「認めずな」
「徹底的に攻撃してですね」
「破壊と虐殺の限りが出来てな」
「絶対の立場だから腐敗もした」
「そうじゃ、比叡山は権勢があるだけであった」
どれだけその権勢が強かろうがというのだ。
「絶対ではなかったからのう」
「腐敗もですね」
「限られておった」
「そういうことですね」
「左様じゃ、ではわしはこれからな」
「毒ガスを造られますか」
「その元となる液体もな」
こう言ってだった、博士は野上君と旅行帰りの会話をしてからだった。研究室に戻り毒薬の調合をはじめた、そして完成するとすぐにテストとして使って多くのならず者を殺した。
朝早くだったので 完
2019・10・2
ページ上へ戻る