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八条学園騒動記

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第五百四十二話 朝早くだったのでその十二

「そして人間ある程度誰でもじゃ」
「生臭いものですか」
「僧籍にあってもな」
「そんなものなんですね」
「人間はやはり世俗とは離れられぬ」
 完全にそうなることは無理だというのだ。
「どうしても俗な部分はな」
「ありますか」
「そうじゃ、まあその尼僧は出家したにしてもな」
「生臭かったですか」
「しかし生臭いまでなら」 
 これで収まっているのならというのだ。
「よい、悪事にならぬまではな」
「バチカンみたいに」
「比叡山位でもわしは何もせんかった」
 肉食妻帯をしていてもというのだ、当時出家した者達はこの二つは禁じられていた。とはいってもよく破られてもいた。
「あの程度であったからのう」
「バチカンと比べると、ですね」
「本当に十字軍等はせんかったからな」
「異端審問もですね」
「どっちも発想の時点でなかった」
「それだけましですね」
「天と地位の差でな」
 そこまで違ったというのだ、比叡山とバチカンは。
「そもそも比叡山は絶対者ではなかったからのう」
「バチカンみたいに」
「唯一の宗教とはな」
「なっていませんでしたね」
「神仏じゃ」
 博士はここでこの言葉も出した。
「日本はな」
「神様もいますね」
「神道もな」
「まずそれがあって」
「そして仏教も様々な宗派がある」
「当時からですね」
「比叡山は密教じゃが」 
 仏教のこの宗派でというのだ。
「密教はもう一つ大きな宗派があるな」
「高野山ですね」
「うむ、比叡山は最澄上人でじゃ」
「高野山は空海上人で」
 それぞれの偉大な開祖達の名前も出た。
「それぞれ違いますね」
「それでじゃ、最初からじゃ」
「絶対じゃないですね」
「比叡山はどうしても高野山に引け目があって仲がよくないにしても」
「潰すまではですね」
「絶対に出来なかった」
 共に護国の寺とされていたこともあった、比叡山は都の鬼門高野山は裏鬼門を護る寺とされてきたのだ。
「それはな」
「だからその時点で」
「バチカンとは違う、神道もな」
 こちらもというのだ。 
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