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夢幻水滸伝

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第百十六話 荒ぶる善その四

「逃げたらあかんってな」
「某アニメの碇さんの息子さんみたいに」
「そや」
 莫にもその顔で答えた。
「ほんまにな」
「シリアスですね」
「めっちゃな」
「そこまで苦手なのですね」
「何度も言うけどな」
 その通りだというのだった。
「苦手や」
「左様ですね」
「見付かりたくないけどな」
「芥川さん神星ですから」
「先頭に出なあかんからな」
 太平洋、地下世界の星達のだ。
「そやからな」
「ほなですね」
「今もここにおるわ」 
 綾乃が先頭に立っていて中里と芥川がすぐ後ろに並んで立っている、中里は江戸時代の大名の礼装である烏帽子代紋で綾乃は日本の女神を思わせる服だ。綾乃はいつもと変わらない。
 その後ろに太平洋の神星の者達が並んでいてその後ろに他の星の者達がいるが。
 その場所からだ、芥川は言うのだった。
「僕は度胸据えてるで」
「逃げないですね、師匠」
「何があっても」
「そや、ここにおるわ」
 芥川の汗の量は増えてきていた、だが。
 彼は逃げなかった、その彼にだ。
 その犬に似た耳を生やした少女が笑顔で右手を挙げて声をかけてきた。
「あなた、私を待っててくれたのね」
「誰が待つか」
 即刻だ、芥川はその少女ラクシュミー=デサイに言い返した。天鞍星でありインドのデリ―出身である、職業は乞食であり種族はワーウルフだが彼女の場合は狼の耳と尻尾は最初から出ているタイプなのだ。
 そのラクシュミーにだ、芥川は嫌そうな顔で言ったのだ。
「自分今は公のばやからな」
「近寄るなっていうのね」
「そや、というか何でエカチェリーナちゃん達より先に声かけてるねん」
「だってあなたに会えるって思って」
 両手に手を当てて顔を左右に振りつつだ、ラクシュミーは顔を赤くさせて言った。
「もう我慢出来なくて」
「そういう問題やないやろ、というかや」
「というか?」
「自分等何で来た」
 芥川は必死に話を公に持って行った。
「そもそも」
「そんなことは後にして」
「後にしてちゃうやろ」
「インド人は自分の興味のある話をするものよ」
「それがあかんのやろ」
「そうかしら」
「今は政やろ」
 その時だとだ、芥川は言い返した。
「それでや」
「恋愛の話は駄目っていうのね」
「そや、常識で考えたらどないや?」
「常識?何それ」
 ラクシュミーは芥川の今の言葉に首を傾げさせて返した、見れば背はそれ程高くなくその動作がわりかし可愛い。
「食べられるの?」
「おう、そう来たか」
「いや、実際に知らないから」
「ラクシュミーほんま強いわ」
「ほんまやな」
 燕尾服のトウェインとタキシードのメルヴィルも唖然となっている。二人共普段の砕けた調子はなく気品さえ感じられる。 
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