夢幻水滸伝
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第百十六話 荒ぶる善その二
「勝ってことです」
「覇者、この世界を救う者として」
「世界に知らせられますが」
「ここで軍勢同士の戦ではない」
「星の者同士だけでの喧嘩の様なものに勝っても」
それでもというのだ。
「それが出来てもです」
「覇者にはなれない」
「お二人は覇道を歩まれています」
「なら尚更ですね」
「私達とは今戦わず」
「後程ですか」
「大軍同士で正面から戦い」
そしてというのだ。
「勝つことをです」
「望まれていて」
「はい、この平城京ではです」
「戦とはならない」
「そうなります、ですから」
「今はですね」
「安心していいです」
戦になるという危険はないというのだ。
「そのことは」
「左様ですか、では」
「はい、緊張しつつも」
「戦になるかと怯えずに」
「堂々と会いましょう」
「それでは」
「あの、師匠」
佐藤はどうかという顔で芥川に言ってきた、勿論彼も妹も芥川も礼装だが三人共室町時代の武士のものである。
「今は」
「逃げ出したいわ」
芥川は佐藤に真顔で答えた。
「全速力でな」
「やっぱりそうですか」
「そや、あいつが来るからな」
「ラクシュミーさんですね」
「そや、あいつだけはな」
どうしてもと言うのだった。
「苦手でな」
「それで、ですね」
「今師匠は」
「全速力で平城京を去りたいわ」
弟子達に強張った顔で述べた。
「今すぐにな、けどな」
「はい、師匠は星のモンで」
今度は香菜が芥川に話した。
「しかも神星ですさかい」
「ここを去ることはな」
「出来んです」
「それがわかってるからな」
芥川にしてもだ。
「僕も今はこの表情や」
「表情めっちゃ強張ってますね」
「戦場におる時よりも」
「相手は知略や武勇が通じん」
芥川は佐藤兄妹に答えた。
「それでや」
「そのお顔なんですね」
「逃げたいと思ってて」
「そや、一番苦手な相手や」
「やれやれ。そんなことならじゃ」
今度は碧が出て来た、普段の着物に袴ではなく江戸時代の姫の恰好だ。髪もその様に結っていて実に可愛い。
「大人しくわらわのプロポーズを受けて高校生夫婦になっておればよかったのじゃ」
「僕しょびっちもアウトや」
「しょびっち?何じゃそれは」
「処女、経験がないのに男好きつまりビッチってことや」
「おかしな言葉じゃのう」
「けど自分まんまやろ」
そのしょびっちだというのだ、碧は。
「キスもまだやろ」
「それは婿殿とだけするものじゃ」
碧は芥川の問いに胸を張って答えた。
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