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八条学園騒動記

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第五百四十話 快適な旅その六

「一体」
「皮を全部剥いだり手足を切ったり背筋で真っ二つにしたり四方から火で囲んで炙り殺したりしたとある」
 全て蜀碧等の記述である。
「わしもよく行うが」
「そうしたことをか」
「よく行ってな、軍隊を出してもな」
「軍隊で住民皆殺しか」
「あと官吏に任用するだのお布施を与える等言って誘き出し」
 そうしてというのだ。
「殺しておった」
「何でもありだな」
「その何でもありがな」
 それがというのだ。
「わしとは違う」
「そうだな、確かに」
「殺し方は同じでもじゃ」
「それでもか」
「そうじゃ、それでじゃ」
「違うっていうんだな」
「左様じゃ」
 博士はライゾウにきっぱりとした口調で答えた。
「断じてな」
「殺し方は同じでもか」
「わしは無差別ではないしな」
「もう殺したいから殺すとかか」
「殺人は趣味でもじゃ」
 このことは事実でもというのだ。
「そんなことはじゃ」
「本当にしねえな」
「左様じゃ、あと巷にたまにおるな」
「ああ、殺人鬼はね」
 またタロが応えた。
「市井に潜んでね」
「こっそりと殺戮を繰り返しておるな」
「本当に稀にね」
「ああした連中とも違う」
「ああした殺人鬼は」
「わしとは全く違うであろう」
「何ていうか異常さとか狂気とか」
 そうしたものをとだ、タロは話した。
「感じるね」
「そうであろう」
「殺した人を食べたりとか」
「そうしたことをする奴もおるな」
「今もね」
「そうした奴は昔からおった」
「嫌なお話だね」
 タロも思わず顔を顰めさせることだった。
「それはまた」
「そしてじゃ」
「沢山の人がだね」
「犠牲になったが」
「博士はそうした連中とも違うね」
「連中には連中なりの美学がある場合もあるが」
 それでもというのだ。
「それでもじゃ」
「殺人鬼の美学とはか」
「まただね」
「わしの美学は違う、そもそもじゃ」
 博士はさらに話した。
「連中の狂気は完全な狂気じゃな」
「マッドサイエンティストの狂気っていうのは」 
 タロが言った。
「殺人鬼のとは違うね」
「そうであろう」
「科学とか学問への崇拝があって」
「わしはあらゆる学問に敬意を持っておる」
「そうだよね」
「そのうえで法律もモラルも無視してじゃ」
 己の美学、己のルールを絶対としてというのだ。
「突き進むのがじゃ」
「マッドサイエンティストだね」
「左様、生体実験もな」
「学問への崇拝や敬意があるんだね」
「そこでどうかじゃが」
「殺人鬼の場合は」
「その殺人鬼によって違うが」
 それでもというのだ。
 
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