八条学園騒動記
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第五百四十話 快適な旅その五
「スターリンは暴君に留まり統治力は最後まであった」
「だからか」
「そこは違う」
「暴君でもか」
「人心はなくしても圧倒的な統治力があればな」
それでというのだ。
「政権はもつ、しかし物語の張献忠にな」
「統治力があるか、か」
「そう思えるかのう」
「ねえな」
ライゾウは一言で答えた。
「どう考えても」
「そうであろう」
「殺すことに夢中でな」
「もう他のことはしておらぬ」
蜀碧という書に書いてあることが仮に真実とするとだ、尚この書のタイトルはそのまま四川省の血という意味である。
「それではじゃ」
「統治とかな」
「頭にない、ではな」
「やっぱり殺されるか」
「そうなるわ」
それこそというのだ。
「幾らおかしな状況でもな」
「だからそうした話はか」
「創作なんだね」
「左様、まあそうした話もあってじゃ」
博士はさらに話した。
「わしはどうかというと」
「そんなことはしない」
「自分の美学に従うんだね」
「張献忠に美学はあるか」
言い伝えられているそれにというのだ。
「実際はどうだったかはともかくな」
「ただ無茶苦茶殺してるだけでな」
「もう殺せ殺せ殺せで」
「他のことはな」
「ない感じだね」
「そうであろう、実際のあ奴にもなかったが」
それでもというのだ。
「創作のあ奴は余計にじゃ」
「美学はない」
「博士が大事にしているそれは」
「そこが博士と違うんだな」
「それも決定的に」
「わしのこの恰好もじゃ」
博士は今はいつもの白のタキシードとマント姿だ、そのいつもの見事な恰好でオートミールを食べて二匹に話しているのだ。
「ポリシーとじゃ」
「美学か」
「それによるものだね」
「マッドサイエンティストはダンディであれ」
「そうした考えか」
「それがポリシーなんだね」
「そうじゃ、これを破ることはな」
それこそというのだ。
「わし自身にとっての裏切りじゃ」
「自分は裏切るな」
「そういうことだね」
「左様、自分を裏切らず」
博士はさらに話した。
「偽らない」
「それもポリシーで美学か」
「こだわってるね」
二匹もそこを納得して頷いた。
「それで人を殺すことについても」
「こだわっているんだ」
「殺すのは暴力で害を為す小悪党じゃ」
暴走族やチーマー、海賊、ヤクザ者がこれにあたるというのだ。
「こうした連中をひっ捕まえてな」
「殺してるんだな」
「そうしてるんだね」
「それも生態実験かゆっくりと時間をかけてじゃ」
「嬲り殺していく」
「そうしていくんだね」
「そうじゃ、尚このことは張献忠と同じじゃ」
先程話した殺人鬼と、というのだ。
「あ奴も殺し方は考えておった」
「具体的にどんなのだったんだよ」
ライゾウは張献忠のそれについて尋ねた。
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