八条学園騒動記
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第五百三十八話 牡丹鍋と羊羹その十
「昔はそうだったんだな」
「四千年以上前はな」
「そうだったんだな」
「四百数百年前か」
酒池肉林の話はというのだ。
「正確に言うと」
「それ位か」
「日本の皇紀より昔じゃ」
「それって大昔だな」
「古代エジプトはもっと歴史があったがな」
博士はその時代の人類の話をさらにした。
「それこそ」
「紀元前四千年位だったかな」
タロは古代エジプトと聞いて述べた。
「エジプトの歴史のはじまりって」
「まあ大体な」
「それ位なんだ」
「そうじゃ、そしてじゃ」
「その頃は」
「干し肉もな」
この時代では何でもない料理はというのだ。
「とんでもないご馳走だった」
「それでその干し肉をか」
「ふんだんに吊るしていたから贅沢だったんだ」
「そうじゃ、さっきも言ったが当時の中国で一番のご馳走だった」
そこまでのものだったというのだ。
「そして数百年で何でもないものになった」
「時代が下ってか」
「そうなったんだね」
「孔子の頃はな」
春秋時代のこの思想家の時代はというと。
「先生への月賦で一番安いものになっておった」
「一番のご馳走からか」
「そうなったんだね」
二匹は今は鍋の肉を食べつつ述べた。
「一気に」
「そこまで変わったんだな」
「左様、そして孔子は干し肉さえ持って来ればな」
一番安い月賦つまり授業料を払えばというのだ。
「誰でも弟子に取った」
「誰でもか」
「そうした風だったんだ」
「孔子は身分に関係なくじゃ」
当時の中国は階級社会だったがというのだ。
「弟子にしておった」
「へえ、誰でもか」
「弟子にしていたんだ」
「孔子は身分差別を否定しておったからな」
儒学の教えの特徴の一つだ、徳のある君主の下に誰もがそうあるべきだと世に説いていたのである。
「そうしておったのじゃ」
「あれっ、身分を肯定せずにか」
「否定していたんだ」
「王様は認めていても」
「身分はなんだ」
「君主の下でじゃ」
徳のある、というのだ。
「誰もが等しく学問で己を育て」
「儒学でか」
「それでだね」
「確かな者が世を治めて」
「正しい世の中にする」
「そうした教えなんだ」
「簡単に言えばな」
実際に博士はかなり簡単に言っていた。
「孔子はそう言っておる、そして孟子はな」
「ああ、儒学だったな孟子も」
「そうだったね」
「より簡単にはっきりと言っておる」
自身の主張をというのだ。
「信頼される人や国になれ」
「そういう風にか」
「孟子は言っているんだ」
「尚孔子も孟子もわしは世を乱す荒ぶる邪な神とか言っておった」
「ってそのままじゃねえか」
「そうだよね」
二匹もそれならと応えた。
「博士を表す言葉として」
「言葉通りだな」
「わしは神と言えばな」
そう言われると、というのだ。
ページ上へ戻る