八条学園騒動記
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第五百三十八話 牡丹鍋と羊羹その九
「ちょっと金を出せばな」
「実現出来るね」
「二十一世紀でもな」
この時代でもというのだ。
「ちょっと出せばな」
「それでだね」
「焼き肉でも食べ放題にお酒の飲み放題がついてな」
「それでだね」
「楽しめたわ」
「そんなものだよね」
「あくまでこれは四千年前の言葉じゃ」
この時代の者達から見れば大昔である。
「正確に言えば三千数百年前か」
「何で数百年の違いがあるんだよ」
「どうしてなの?」
「これは確か司馬遷の史記の言葉じゃ」
中国の歴史の中で最初の本格的な支書とされている、この書から中国の歴史書が本格的にはじまったとさえ言われている。
「史記は酒池肉林の殷より八百年以上後の時代の書じゃ」
「ああ、それでか」
「正確に言うと三千数百年前の言葉なんだ」
「言葉自体は」
「その頃なんだね」
「その贅沢は四千年前でもな」
言葉はというのだ。
「その頃じゃ」
「言葉はか」
「そうなんだね」
「左様じゃ、そしてな」
博士は二匹にさらに話した。
「わし等も今は楽しんでおる」
「酒池肉林を」
「現在進行形で」
「そうじゃ、悪いものでなかろう」
「それはな」
「その通りだね」
「これ自体は別にじゃ」
これといってというのだ。
「悪い遊びではない」
「退廃的でもないんだな」
「途方もないことじゃないんだね」
「うむ、ただな」
それでもと言うのだった。
「ここに色が入るとな」
「その時はか」
「悪いものになるんだね」
「左様、美女を何人も侍らせて遊ぶと」
それでというのだ。
「全く意味が変わる」
「悪いものになる」
「そうなるんだ」
「そういうことじゃ、まあおなごを侍らすなぞな」
「博士には無縁だな」
「それはね」
「しようと思ったことなぞな」
それこそと言うのだった、博士も。
「全くない」
「そうだよな」
「女の人については」
「酒と美食で充分じゃ」
この二つでというのだ。
「わしはな」
「酒と肉か」
「この二つで」
「そうじゃ、酒を飲み」
今実際に飲んでいる。
「そして肉じゃ」
「猪肉にしてもな」
「お肉だしね」
「本当のその二つか」
「その二つで充分なんだね」
「そしておなごへの興味はな」
飲みつつまた言った。
「持ったことはない」
「やっぱり博士はそうだな」
「そんな人だね」
「そういうことじゃ」
「というか昔は干し肉がご馳走か」
ライゾウは酒池肉林の最初の話に戻して述べた。
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