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八条学園騒動記

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第五百三十八話 牡丹鍋と羊羹その七

「当然じゃ」
「そういえば博士ってな」
 ライゾウは鍋の中の野菜を食べつつ言った、博士が出した自分達で動く箸によって彼とタロの碗に食べものがいられている。
「幾ら飲んでも乱れないな」
「そうであろう」
「いつもワインとか飲んでるのにな」
「だから飲んだ時もな」
「紳士であれか」
「そうじゃ」
 そうした考えだからだというのだ。
「わしは飲んだ時もじゃ」
「紳士なんだな」
「その様に心掛けておってな」
 盃の中の酒をさらに飲みつつ話した。
「乱れることのない様に」
「しているんだな」
「幸い酒乱でも放浪癖でもない」
「酔ってかよ」
「あちこち歩くこともない」
「そういえばそんな奴もいるな」
 ライゾウは猪肉、よく煮えているそれを食べながら頷いた、味噌で味付けされた猪肉は確かに固いが美味い。
「酔うとな」
「泣く者も笑う者もな」
「それぞれだよな」
「絡む奴に黙る奴にじゃ」
「それで酒乱にか」
「あちこち彷徨う者もおってな」
 博士はさらに話した。
「中には脱ぐ者もおる」
「脱がれるとね」
 どうかとだ、タロも猪肉を食べながら応えた。
「嫌だよね」
「そうであろう」
「男女共にね」
「男は特にじゃな」
「見苦しいよね、あれは」
「幸いわしの助手ではおらんかったが」
 歴代の彼等はというのだ。
「野上君もな」
「野上君はあれだよね」
 タロは今度は葱を食べていた、本当は葱は犬には悪いがそうしたところも博士は改造しているのだ。
「飲み過ぎたら潰れるね」
「そうなるのう」
「静かにね」
「ああいうのはよい」
 酔い潰れることはというのだ。
「別にな」
「そっちはいいんだね」
「誰にも迷惑はかけんからな」
「博士って人類最大の迷惑だけれどね」
「しかし酔って迷惑はかけん」
 これは絶対だという返事だった。
「だから言うのじゃ」
「酔って人に迷惑はかけない」
「これも紳士じゃ」
 そうありたいと思っている者の守るべきことの一つだというのだ。
「まさにな」
「それで野上君はだね」
「酔って吐かぬしな」 
 このこともないからだというのだ。
「尚更よい」
「それはね」
「いいのう」
「酔って吐く場合もあるしね」
「そうであるな」
「それもないとね」
「尚更よいのう」
「確かにね」
「しかもな」
 博士はさらに言った。
「野上君は陽気に飲むしな」
「飲みはじめると食うのが止まらないけれどな」 
 ライゾウはこのことを指摘した。
「どんどん食うよな」
「そうそう、もうお酒を飲む時は」
 タロも応えて頷いた、そうしつつ今度は白菜を食べている。見れば鍋には椎茸やしめじ等茸も多く入っている。 
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