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八条学園騒動記

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第五百三十八話 牡丹鍋と羊羹その一

                牡丹鍋と羊羹
 博士と二匹は店の者に奥座敷の部屋に案内してもらった、そうしえその部屋の中で食べることになったが。
 料理が来る前にだ、ライゾウは座布団の上から博士に問うた。
「ちょっといいか」
「どうしたのじゃ」
「何で牡丹なんだよ」
 自分の向かい側に座っている博士に尋ねた。
「猪の鍋って」
「そのことか」
「ああ、博士は知ってるよな」
「無論じゃ」
 これが博士の返事だった。
「わしの知らぬことはない」
「そう言っていいよな」
「二百億年生きていてじゃ」
 そしてというのだ。
「知能指数は二十万じゃ」
「もう何でもだよな」
「知っておってな」
 そしてというのだ。
「覚えておる」
「それでだよな」
「鍋のことも知っておる」
 その鍋のこともというのだ。
「何故猪鍋を牡丹鍋と呼ぶかもな」
「じゃあ教えてくれよ」
 ライゾウは博士に毛づくろいをしつつさらに問うた。
「何でそう呼ぶんだよ」
「猪肉を切って飾ってじゃ」
 そうしてというのだ。
「それが牡丹の花みたいでじゃ」
「それでか」
「猪肉の色がな」
「だから牡丹か」
「その飾り方も牡丹の花に似せたしのう」
「それは日本ならではか」
「うむ、日本人はじゃ」
 博士は今度は自分達が今いる国のことも話した。
「料理を飾るな」
「それにも凝るよな」
「それで猪肉もじゃ」
 これもというのだ。
「凝って飾ってじゃ」
「お花みたいにしてか」
「それが牡丹みたいでな」
 そう見えてというのだ。
「そうなったのじゃ」
「成程な」
「面白いであろう」
「確かに面白いね」
 タロは座布団の上に座った姿勢で言った。
「無骨な感じの猪がね」
「牡丹とはじゃな」
「面白いよ」
「そうしたセンスがじゃ」
 博士はタロにも笑って話した。
「日本人じゃ」
「日本人のセンスだね」
「うむ」
 その通りだというのだ。
「そういうことじゃ」
「成程ね」
「それでじゃが」
 博士はさらに言った。
「そろそろそのお花が来るぞ」
「牡丹のお花がだね」
「とびきり大きくて美味いな」
 博士はタロ達に笑って話した。
「そうしたお花が来るぞ」
「そうなるね」
「そしてじゃが」
 博士はさらに話した。 
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