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八条学園騒動記

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第五百三十七話 歓楽街は素通りしその四

「全員な」
「そうだったんだな」
「その梅毒がな、かつてはじゃ」
「温泉でも流行ってたんだな」
「身体を清める筈がな」
「逆にか」
「そうした病気にかかっていたのじゃ」
「怖い話だな」
「しかしわしはな」
「そうしたお店に入ったことがないから」
 タロが言ってきた。
「それでだね」
「うむ、それこそ一度もじゃ」
「梅毒になったことがないんだね」
「淋病にもな」
「エイズにもだね」
 この時代ではエイズのペニシリンも存在している、結局解決策がない病気なぞこの世にないということか。
「なったことがないんだね」
「そうした病気にはな」
「そして興味もだね」
「ない」
 風俗店自体にというのだ。
「だからわしには性欲自体がない」
「子供を作ることも」
「そうした能力もない」
「そうなんだね」
「そこは神々とは違う」
「博士もそう言われる存在なんじゃ」
「そうしてもよいがとにかくな」
 博士自身はというのだ。
「子供を作ることは出来ぬ」
「最初からだね」
「そうした身体の構造なのじゃ」
「それでなんだ」
「わしは酒や美食は好きじゃが」
「女の子には興味がない」
「男にもな」
 とかく性のことには縁がないというのだ。
「そうした興味を抱いたことはない」
「成程ね」
「しかしじゃ」
「しかし?」
「今言ったが酒と美食は好きじゃ」
「それでだね」
「これから牡丹鍋と日本酒じゃ」
 この組み合わせをというのだ。
「楽しむぞ」
「それじゃあね」
「さっき豚肉と猪肉は似てると言ったが」
「僕が言ったね」
 タロはすぐに答えた。
「そうだね」
「うむ、それは当然じゃ」
「猪を家畜にしたのが豚だったね」
「だからじゃ」
 それ故にというのだ。
「味が近いのもな」
「当然だね」
「家畜化されて匂いが薄くなり」
 野生のものを食べなくなってだ。
「肉も品種改良で柔らかくなっておるが」
「そこでも食べものの関係があるね」
「そうじゃ、しかし味はな」
 それ自体はというのだ。
「似ておるのもな」
「当然だね」
「むしろそっくりと言っていいのう」
 豚肉と猪肉の味はというのだ。
「確かに匂いがして固いが」
「猪肉の方がね」
「それでもじゃ」
 味自体はというのだ。 
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