八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第二百四十六話 ビロードその十二
「言うならね」
「そうなのネ」
「うん、それで」
ジューンさんにあらためて言った。
「同じクラスの」
「真一郎ヨ」
「そうだったね」
「アメフト部でネ」
「ああ、あのスポーツしてるんだ」
「凄くパワフルで優しいノ」
「そんな人なんだね」
はじめて聞く人なので僕もこう返した。
「それでその人と」
「体育祭が終わってからネ」
「交際してるんだ」
「それで私今幸せヨ」
ジューンさんは笑ってこうも言った。
「本当に。それでネ」
「それで?」
「昨日お願いしたノ」
「神様にかな」
「牧師さんにネ」
ジューンさんはプロテスタントらしい、何でもアメリカではかつてはこちらが信仰の主流だったらしい。
「お願いして神にネ」
「そうしてきたんだ」
「そうヨ、そして私自身モ」
「努力していくんだ」
「このことも誓ったかラ」
「そうなんだね」
「私今以上に幸せになるかラ」
僕にこうも話してくれた。
「本当にネ」
「頑張ってね」
「ええ、絶対に鴎外さんみたいにはならない子だシ」
「ああした人にはだね」
「正直そんな最低な人と思わなかったかラ」
どうしてもというのだ。
「本当ニ」
「酷過ぎるからね」
「太宰治も愛人さんいたのよネ」
ジューンさんはこの人の名前も出して来た。
「そうよネ」
「うん、二人いてね」
結婚してからのことだ。
「それでね」
「一人がお子さん産んデ」
「もう一人の人とね」
「心中したんだったわネ」
「玉川上水でね」
昭和二十四年六月十三日のことだ。
「そうしたんだ」
「太宰もそういうの見たラ」
「ジューンさんとしては」
「どうかって思うけれド」
それでもというのだ。
「森鴎外よるはネ」
「遥かにましだよね」
「女の人捨てたのかラ」
「太宰はそれはしなかったよ」
愛人さんとの間に生まれたお子さんもちゃんと認知している。
「その人から逃げるみたいに別の人に行ったけれど」
「心中した人ト」
「そうしたけれどね」
それでもだ。
「現地でそうなって後で知らない振りする様な」
「そんなことしなかったわネ」
「それに脚気みたいなことしなかったから」
「そうよネ」
「というかそうしたことは」
「太宰は嫌いだったのネ」
「うん、あれで結構根は奇麗だったから」
色々と言われている人であることは事実でもだ。
「戦争支持していた人が戦後戦争反対だったとか言うのもね」
「批判していたのネ」
「そうだったしね、皇室についても」
「どうだったノ?」
「戦後ややこしい時にね」
共産主義が凄い勢いだったその時にだ。
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