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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第二百四十六話 ビロードその十三

「天皇万歳、それが素直な気持ちだってね」
「言ったのネ」
「作品の中でね、あの戦争についても」
 太宰は終戦直後に言っていた。
「親が負けるとわかっている戦争をやるのに子供がついていかないか」
「そう言ってたノ」
「それであの戦争への考えを表明したんだ」
 多くの人が急に戦争反対と言っていた時代にだ。
「だからね」
「卑怯じゃなかったのネ」
「逆に共産主義というか」
 僕はジューンさんに難しい顔で話した。
「リベラルとかいう」
「ああした人達の方がなノ」
「ずっと卑怯なんだよね」
「太宰よりモ」
「太宰は卑怯ではなかったから」
 むしろ人間としてのそれを心から嫌っていた、だから偽善も卑怯だとみなして徹底的に嫌っていたのだ。
「それで頑迷でもね」
「なかったのネ」
「結構人の話は聞いたみたいだよ」
「森鴎外と違っテ」
「そうだったみたいだし」
「あまり悪い人じゃなかったのネ」
「うん、だから僕としては太宰の方が」
 僕個人としてはだ。
「好きかな」
「そうなのネ」
「うん、ただね」
「たダ?」
「自殺はキリスト教では駄目だよね」
「絶対にネ、それこそネ」
 ジューンさんは自殺についてはこう話してくれた。
「地獄に落ちる罪よ」
「そうだよね」
「本当にネ」
「絶対にしたら駄目だね」
「そんな罪ヨ」
 罪とまで言った。
「自殺ハ」
「だから太宰も」
「そこは物凄いマイナスヨ」
「やっぱりそうだよね」
「けれド」
 それでもとだ、僕にさらに話してくれた。
「それはキリスト教デ」
「太宰はクリスチャンかっていうと」
「違ったのよネ」
「宗教は何だったかな」
 太宰のそれはだ。
「そう言われたら」
「知らないのネ」
「けれどクリスチャンじゃなかった筈だよ」
 このことは間違いない筈だ。
「だからね」
「自殺についてモ」
「あの人何度かしようとしてたし」
 心中前にだ。
「四回位ね」
「多いわネ」
「自殺マニアだったかというと」
 こう言う人もいる、それも真顔での指摘だ。
「そうだろうね」
「死にたがりだったのネ」
「普段は明るかったっていうから」
 作品からは想像出来ないけれどだ。
「躁鬱症だったかもね」
「明るくなったり暗くなっテ」
「暗くなった時に」
 つまり欝の時にだ。
「死にたくなったのかも知れないよ」
「それで自殺しようとしたノ」
「実際にね、最後はね」
 遂に自殺したその時はというと。 
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