占術師速水丈太郎 死の神父
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第二章
「宜しくお願いします」
「その様に、ではクロアチアに向かい」
「すぐにですね」
「その輩を討ち」
「人々の命を脅かす魔を消し去ってくれますか」
「必ず」
その右目の黒い光を強くさせてだった、速水はバチカンから身分を隠して自分の前に来た枢機卿に答えた。そうしてだった。
すぐに日本を発つ準備に入り店はスタッフに任せた、そのうえでまずはイタリアに向かいそこからまた飛行機を使い今回の裏の、実は本来の仕事を行う世界である。
その世界に入った、もっと言えば戻ってだった。速水はすぐにクロアチアに向けて出発した。彼はまずはイタリアに空路で向かいそれからは海路でクロアチアに向かった。その際案内役であるバチカンから彼の案内役として付けてもらえた若いが司教の階級にもなったフェルディナント=ゴンガーザ茶色の癖のある短くさせた髪に彫のある鳶色の瞳が目立つ彫のある整った顔立ちをした中肉中背の彼が速水に共に食事を摂りつつ言ってきた。
「今回のお仕事はです」
「法皇庁がですね」
「全面的に支援しますので」
それ故にというのだ。
「道中のことはです」
「一切気にせずに」
「貴方が贅沢をされない方ということはわかっていおますし」
「決められたホテルに泊まってですね」
「お食事にも贅沢を求めない方とです」
このこともというのだ。
「法皇庁、もっと言えば猊下もご承知なので」
「だからですね」
「安心してです」
速水の人柄を知っているからだというのだ、契約を申し出た方が提示したもので満足しそこからは逸脱しないどころか遠慮さえする彼の性分をだ。
「ですから」
「それでは」
「今回のお仕事のこともです」
「安心してですか」
「支援を任させて下さい」
「そのこと安心させて頂きます」
速水はメインディッシュの豚のグリルを食べつつゴンガーザ司教に答えた。
「私もです」
「それは何よりです。ただ」
「ただ?」
「実は今回は依頼をしたのは法皇庁だけでなく」
「他の組織もですか」
「どうもです」
こう前置きしてだ、速水に話した。
「正教の方も動きまして」
「セルビア正教ですか」
正教と聞いてだ、速水は司教にすぐに応えた。
「あの宗教組織がですか」
「クロアチアはかつてユーゴスラビアでしたね」
「はい、あの国家の中にありましたね」
チトーが大統領として治めていた、彼が大統領であった頃は一つの国としてその中に多くの民族と国家が存在していたのだ。
「そして長い内戦の結果でしたね」
「独立しましたがセルビア人もいまして」
クロアチアのその中にだ。
「そしてセルビア正教も存在していまして」
「それで、ですね」
「セルビア人の犠牲者も出ていまして」
そうしてというのだ。
「セルビア正教も動いて」
「私とは別の方にですか」
「神父を倒す様に依頼しています」
「そうですか、その方がどなたか」
速水は食べつつ言った、フォークとナイフを動かす手は止まらず豚肉の味を楽しみ続けながらの言葉だ。
「まだ存じませんが」
「その方との共闘になるかも知れません」
「わかりました」
速水は司教に率直な声で答えた。
「そのこともまた」
「報酬は約束通りお支払いしますので」
例えその者と共闘して神父をその者が倒してもというのだ。
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