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占術師速水丈太郎  死の神父

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第三章

「法皇庁が契約したのは貴方なのですから」
「それ故にですか」
「はい、報酬のことはご安心下さい」
「わかりました」
 速水も確かな声で返事をした。
「それでは」
「その様に、そして食費や宿泊代は」
「私が支払う形になりますね」
「いえ」
「まさか」
「そちらもです」 
 そうした仕事の際の諸経費もというのだ。
「ご安心を」
「食事もお酒も」
「ホテルもです」
「いえ、それは」
「払わなくていいと」
「私はお金には困っていません」
 速水は今はスーツで己の素性を隠している司教に食事を摂りながら微笑んで話した。
「ですから」
「そういったことへのお金はですか」
「普通に出せます、伊達にこうした仕事をしていません」
 表の仕事である占い師としても収入に苦労はしていない、だがそれ以上に裏のもっと言えば本業である退魔師の仕事でというのだ。
「ですから」
「そういったことについてはですか」
「私で出します、お気遣いは有り難いですが」
「そうですか」
「お気持ちだけです」
 まさにそれだけをというのだ。
「受け取らせて頂きます」
「左様ですか」
「そういうことで。では」
「それではですね」
「まずはクロアチアに着き」
 そうしてというのだ。
「相手と戦って事態を収拾したいですが」
「ですが、となりますと」
「私の、そして他の方の相手となる神父の情報を知りたいのですが」
「敵を知りたいのですね」
「仕事のことを知らなければ」
 まずそこからだというのだ。
「さもないといい仕事は出来ません」
「だからですね」
「はい、まずはです」
 何といってもというのだ。
「事前の情報収集を行いたいですが」
「そうですね、ではまだクロアチアに着いていませんが」
 それならとだ、司教も応えてだ。そのうえで。 
 司教は食事がメインディッシュのグリルからデザートのジェラートに移る中で速水に彼が戦い倒さなければならない相手のことを話した。速水も司教の話を聞いた。
 そうしてだ、船が目的地であるクロアチアの港に着いてからだった。彼はクロアチアの青い海と空イタリアのそうしたものに近い場所を見ながらだった。
 そのうえで共に港に上がった司教に対して黒い切れ長の整った黒い瞳を鋭くさせて彼に話した。
「予想通りでした」
「狂気の人物ですね」
「はい、予想通りでしたが」
 それでもとだ、言葉を繰り返してそのうえで言うのだった。
「それでもです」
「不快ですね」
「そうした相手とも何度も戦ってきて倒してきました」
 速水はこの事実も述べた。
「ですが狂気、それはです」
「人が持っている中で」
「最もおぞましいものです」
 それ故にというのだ。
「ですから」
「この度もですか」
「不快感があります、ですが」
「それでもですね」
「そうした相手こそです」
 狂気に満ちた輩こそというのだ。 
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