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夢幻水滸伝

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第百十話 争わずともその一

               第百十話  争わずとも
 この時奈良の唐招提寺に多くの者達が来ていた、美鈴はその中の熊人の男に声をかけていた。
 この熊人の男の名をチャールズ=モンゴメリという。カナダのバンクーバー出身で星は天究星、職業は樵であり手に敷いている神具は武器であり樵道具でもあるオブンの斧と兜のカフヴァール、無限に湧き出て飲むと知恵を授けてくれる蜜酒が入った壺の三つだ。
 その彼にだ、美鈴は言うのだ。
「この世界でもたい」
「唐招提寺は鑑真さんが開いたんやね」
「中国の方から来たな」
「僕等はこの世界に来るずっと前にやな」
「そうたい」 
 こうモンゴメリに話した。
「溺死のあるところたい」
「そうやねんな」
「そうたい、ただ」
「ただ、どうかしたんかいな」
「私自身はこのお寺に来たことはあまりなかとよ」
 モンゴメリにやや難しい顔で述べた。
「これが」
「ああ、あんた九州の人やからな」
「九州は福岡たい」
 美鈴は強い声で答えた。
「いいとことよ」
「そうらしいな」
「特にラーメンがよかとよ」
「そこで食べものかいな」
「あとホークスもよかたい」 
 美鈴は今度は野球の話をした。
「今年も強かとよ」
「起きた世界では昨日も勝ってたな」
「ダルビッシュさんやマー君や大谷さんじゃないと止められんとよ」
「三人もおるやん」
 小柄で黄土色の毛色の馬人の男が言ってきた、着ている服はモンゴル伝統の民族衣装と帽子とブーツである。天周星チャドラバリーン=ナツァグドルジである。服でわかる通りモンゴル出身であり職業は政治家だ。持っている神具はチンギス=ハーンの弓に傍に従っている青き狼と白き牝鹿の三つだ。狼も鹿も勇敢かつ強力な神具の獣でありかつ主に助言も与えてくれる。
「既に」
「そうですね、ただです」
「そのお三方がどれも恐ろしい方なので」
 狼と鹿がここでナツァグドルジに言った。
「敗れても仕方ないかと」
「野球人としての能力が傑出していたので」
「それもそうか」
 ナツァグドルジも彼等の言葉に頷いた。
「言われてみれば」
「はい、逆にお三方の方が凄いかと」
「あの戦力を止められるのですから」
「確かにホークスは強い」 
 ナツァルグドルジは今度は冷静な声で述べた。
「あの戦力を止めるとかな」
「まず出来ませんから」
「おいそれとは」
「そやな、ほな美鈴さんが正しいな」
「そうたい、あんな化けものが三人も出たとよ」
 美鈴はナツァルグドルジにまた言葉を返した。
「そう考えてもらいたいたい」
「ほなな」
「そう考えるわ」
「そうしてもらうたい、しかし」
 また言う美鈴だった。
「今年は優勝狙うとよ」
「そしてまた阪神と戦うんやな」
 人間そっくりに見えるがセルキーだ、海豹の毛皮は背中のリュックにある。もっと言えばミニスカートの白と黒のメイド姿だが性別は男だ。天楽星黄政秀である、台湾出身で職業は言うまでもなくメイドである。持っている神具はメイド服になっている己の身を守ってくれる傾世元と鳴らすと炎を出す紫鈴と仰ぐと風を起こす芭蕉扇の三つだ。 
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