八条学園騒動記
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第五百三十三話 天本博士と謎の集団その十一
「行ってくる」
「そうですか」
「この二匹と一緒にな」
博士はライゾウとタロも見て話した。
「行って来るぞ」
「じゃあ留守番頼むな」
「少しの間ね」
二匹も野上君に話した。
「まあ博士のことだから無茶苦茶するけれど」
「そこは仕方ないとしてな」
「それじゃあね、けれどね」
それでもとだ、野上君は二匹に言葉を返してからだった。自分から二匹に対して微妙な顔になって話した。
「君達いつもと変わらないね」
「旅行を出ることになってもか」
「それでもだね」
「うん、いきなり決まったけれど」
「そんなの別にな」
「今更言ってもね」
「博士の常だからな」
だからだというのだ。
「それこそ」
「いつも急に何かするからね」
「もうな」
「今更っていうか」
「普通って感じだぜ」
「二匹共肝が座ってるね、僕なんて」
自分がどうかとだ、野上君は二匹に話した。
「とてもね」
「落ち着いていられないか」
「いつも」
「いや、落ち着いてはいるよ」
このことは大丈夫だというのだ。
「ただね」
「ただ?」
「ただっていうと」
「博士が何をしでかすか」
「そう思ってか」
「不安になるんだ」
「そう、落ち着いてはいても」
それでもというのだ。
「不安にはなるよ」
「まあそれはな」
「仕方ないね」
「博士って本当に何をしでかすかわからないから」
「本当にそんな人だからね」
「わしはIQ二十万の天才科学者であり」
その博士の言葉だ。
「医学も錬金術も魔術も極めておる」
「そしてそれでいて、ですよね」
「好奇心旺盛なのじゃよ」
「あとモラルは」
「モラル?そんなものがあってもじゃ」
博士はモラルについてはこう述べた。
「楽しみの邪魔なだけじゃ」
「いらないっていうんですね」
「わしにはポリシーがある」
モラルではなくだ。
「マッドサイエンティストはそれに従ってじゃ」
「生きられるんですよね」
「そうじゃ」
こう野上君に言うのだった。
「マッドサイエンティストに必要なものはじゃ」
「高度な頭脳と研究心とですね」
「ポリシーじゃ」
「モラルは必要ないんですね」
「そうじゃ、モラルのあるマッドサイエンティストがおるか」
「モラルがあればマッドサイエンティストじゃないですよ」
野上君もはっきりと答えた。
「それこそ」
「そうであろう」
「だからですか」
「わしは二百億年の間モラルは持ったことがない」
「一度もですね」
「持とうと思ったこともない」
「だから危険物や大量破壊兵器を開発、製造して」
野上君は博士のその所業について述べた、
「気に入らん小悪党は虐殺するんですね」
「そうじゃ、間違っても普通の市民は害することもはない」
「一人もですね」
「そして戦う相手もじゃ」
「命は奪わないんですね」
「兵器は破壊してもな」
そうしてもというのだ。
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