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夢幻水滸伝

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第百八話 低い山なれどその十

「解決しにくい問題で」
「そうしたことはな」
「部族や宗教が幾つか混在していると」
「そうだ、それは幾つかでだ」
 吉川はビークにあらためて話した。
「それがだ」
「何十にもなると」
「部族も宗教もな」
「かえってですね」
「争いは起きない」
「混在し過ぎていて」
「その様だ、だからだ」
 それ故にとだ、吉川はさらに話した。
「この世界はな」
「種族同士での争いが少ないのですね」
「欧州以外の地域では何処も何十もの種族が混在している」
 欧州は比較的人間に似ている種族ばかりだ、人間だけでなくエルフやドワーフ、ホビット、精霊やヴァンパイア等ばかりなのだ。
 しかしだ、欧州以外の地域はだ。
「どの街も村もな」
「そうですね、この日本もそうですし」
 ママニは今自分達の近くで遊んでいるリザードマンの子と甲殻人の子を見つつ吉川に応えた、二人共元気に遊んでいる。
「何十、八十はある種族が」
「共にあるな」
「そして喧嘩をしても」
 時にはだ。
「共存していますね」
「宗教についてもな」
「日本は元々宗教が混在していますが」
「この世界では他の地域もだ」
 勿論アフリカもだ。
「一つの村にキリスト教とエジプトやメソポタミアの神々、それに土着の宗教にイスラム教にと存在しているな」
「教会や神殿、モスクも」
「そして様々な種族が信仰している」
 それぞれの宗教をだ。
「そうなっているからだ」
「尚更ですね」
「混在していてだ」
「複雑な模様の様ですね」
 ここでこう言ったのはライアだった。
「服にしろ絨毯にしろ」
「モザイクだな」
「はい、簡単に言いますと」
「モザイク模様の様ならな」
「かえってですね」
「それぞれで何かあってもな」
 例えそうなってもというのだ。
「小さいし周りも言う」
「だから止まりますね」
「大事になる前にな、だからこの世界はだ」
「深刻な部族や宗教の対立が少なく」
「その分平和ということだろう」
「このことはいいことですね」
「自分達の種族や国家を愛することはいい」
 吉川はこのことは肯定した。
「自分の親を愛する様な自然な感情だ」
「そうですね、そのことは」
「だからあっていい、宗教も必要だ」
「人はパンと水だけでは生きていられない」
「信じるものが必要だ、それに現実にだ」
 吉川は自分達が今いる若草山の方から春日大社や東大寺を見つつ言った。
「神仏は存在しているしな」
「その存在を感じることもですね」
「必要だ、人は力を持っているが」
 このことは事実でもというのだ。
「神仏の前には小さい」
「そのことを感じることも大事ですね」
「さもないと驕りも生じる」
 この感情もというのだ。
「そして取り返しのつかない過ちも犯してしまう」
「思えば無神論者、共産主義ですね」
 レベッカはその顔を曇らせて言った。 
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