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夢幻水滸伝

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第百八話 低い山なれどその十一

「あのイデオロギーは」
「知っての通りだな」
「あの様な過ちを犯してしまいましたね」
「そうなったことを見てもな」
「神を感じることは」
 無論仏もだ。
「人に必要ですね」
「私は現実に無神論者を知っているが」
 吉川は現実の話もした。
「この輩は我が国、日本の皇室を否定しているが北朝鮮のあの独裁者の世襲は認めている」
「明らかに必要なものを理解していませんね」
「まごうかたなき愚か者だ」
「私もそう思います」
「そうもなりかねない」
 神仏を否定しているならというのだ。
「何でも自分の力のみを信じているというが」
「既に大変な勘違いをしていますね」
「長じてどうなるか」
 吉川は冷めた目で述べた。
「知れている」
「その通りですね」
「何も考えていない方がましだ」
 その様な輩になるならというのだ。
「まことにな」
「そこまで愚かですと」
「そうだ、真の愚か者にもなりかねない」
「だからこそ宗教も必要ですね」
「そうだ、しかし他者を認めないとな」
「宗教は毒になりますね」
「種族や国家もな」
 こちらもというのだ。
「同じだ」
「偏狭になりますと」
「それは惨事や悲劇に至る」
 そうなってしまうというのだ。
「あくまでな」
「信じても愛してもですね」
「偏狭にならないことだ、そして常に雑多な中にいて様々なものを観られれば」
「この世界ですね」
「そうした偏狭に陥ることはな」 
「稀になりますね」
「そうだ、だからこの世界ではな」
 吉川はレベッカにさらに話した。
「そうした争いはな」
「非常に少ないですね」
「このことはいいことだ」
「確かに。ただ」
 ママニは難しい顔で吉川に言ってきた。
「様々な危険な獣やモンスターが多いことは」
「そのことについてはな」
「残念ですね」
「いいことばかりの世界はあるか」
「そう言われますと」
「ユートピアはな」 
 苦しみも悲しみも災厄もない、そうした世界はというのだ。
「人は結局だ」
「手に入れられないですか」
「求めてもだ」
 それでもというのだ。
「人が生きている世界ではな」
「手に入れることはですね」
「出来ないのかも知れない」
「人が生きている中では」
「そうかも知れない、あらゆる宗教や哲学が求めてきているが」
 古代ギリシア哲学でもそうだった、人はどうして楽園に至れるかということは人の永遠の課題の一つであろう。
「しかしだ」
「そこに至ったことはですね」
「残念だがな」
「一度もないですね」
「そうだ、個人ではあるだろうが」
 それでもというのだ。
「人の世界はな」
「ないですね」
「そもそもユートピアは一つか」
 吉川はこうも言った。 
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