夢幻水滸伝
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第百七話 若草山にてその十
「表では握手をしていても」
「裏では殴り合っている」
「そうしたものでもありますし」
「こうしたことも言わへんということで」
「それがマナーというものです」
「ルールはなくてもマナーがある」
フルルはカマンダにクールな目を向けて述べた。
「それが外交やね」
「はい、若しマナーを忘れると」
「外交としては下」
「下の下以下です」
そうなってしまうというのだ。
「外交は紳士が行うものですから」
「そやから今も」
「こうしておもてなしをしてもらっています」
「これも外交の一環やね」
「今の吉川さんはおもてなしして下さっていますが」
彼の言葉を借りればというのだ。
「ですが」
「外交の一環でもある」
「そうなのです」
「少なくとも政の話を話す場ではない」
アチェベは吉川を見てカマンダに話した。
「そういうことやな」
「はい、外交の場であっても」
「そやから吉川さんも話さない」
「そうなります」
「この若草山のことなら話す」
これが吉川の返答だった。
「何でも聞くといい」
「お話を聞くといっても」
アチェベはどうかという顔で吉川に返した。
「ここのことは」
「既にか」
「何度か来ていて」
「ここにいてか」
「わかってきているので」
「聞くことはないか」
「どうも。ただ何度来ても」
それでもとだ、アチェベはこうも言った。
「いい場所ですね」
「そう言ってくれると何よりだ」
「こうした山も」
「草原の山というのも」
どうにもとだ、クッツェーも話した。
「面白いですね」
「そうだな」
「はい、木がなく」
「ここはそうした山でな」
「しかも気軽に登れますね」
「頂上までもな」
「ピクニックにも向いていますね」
「何ならそちらもだ」
ピクニック、それもというのだ。
「楽しむといい」
「それでは」
「ただしだ」
「ただしとは」
「ここは外だからな」
このことについてもだ、吉川は話した。
「雨や雪が降るとな」
「楽しめない場所ですか」
「そこが難点か」
「そうなりますか」
「だが晴れの時はな」
「お弁当を持ってですね」
「そしてだ」
そのうえでというのだ。
「ピクニックもいいだろう」
「その時は」
ピクニックと聞いてだ、ニャメは微笑んで話した。
ページ上へ戻る