夢幻水滸伝
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第百七話 若草山にてその八
「戦をしても」
「ええ、国土を荒らさずに」
「出来るだけにしても」
「人を傷付けないことよね」
「それが理想ですね、ほんま」
ファラーはアレンカールのその考えに同意して頷いた。
「戦はせんにしても」
「避けられないならね」
「すぐに終わらせる」
「それがいいわよ」
「そこほんま同意ですわ」
「戦は」
青いザリガニの甲殻人の男だ、着ている服は黒地で袖のところが極めて太い二本の金色のモールが縛られている感じの模様になっているスーツを着ている。ズボンも黒だ。地劣星レオポル=ウスマンである。セネガル出身で職業は船乗り手にしている神具は大蛇アピスと航海のあらゆることが書かれているヌンの書である。
「するなら」
「ほんまによね」
「すぐに終わらせて」
「戦禍は最低限よ」
「そうせんとあかんですね」
「アフリカはね」
「はい、僕達の起きた世界やと」
どうかとだ、ウスマンはアレンカールに暗い声で答えた。ザリガニのその目も暗い色に変わっている。
「どうも」
「まだね」
「内戦とかがあって」
「戦でね」
「苦しんでます」
実際にというのだ。
「そんな国がまだ多いです」
「だからね」
「余計にですね」
「あたいも思うのよ」
「戦をしても」
「一戦で終わらせるべきよ」
「ほんまにそうですね」
「そのことは」
「若しも」
日本の陰陽師の恰好だが何と緑と黄色、黒のジャングルの様な模様である。烏帽子は赤だ。そんな服装の象人だ。地健星トマス=クルマである、コートジボアール出身で職業は陰陽師手にある神具は魔力も備えている鋭い光を放つマアトの剣に使用する術の力を飛躍的に上げてくれるクヌムの杖である。
「長期戦になれば」
「本当にね」
「アフリカの内戦が起こっている国々の様に」
「陰惨な状況になるわ」
「左様ですね」
「だからね」
それでとだ、アレンカールは述べた。
「余計によ」
「戦をするなら」
「一気によ」
それこそというのだ。
「終わらせるべきでね」
「神星の人達もそうしたお考えで」
「十人で話をしてね」
「進めていっていますか」
「そうよ」
「日本としてもだ」
その日本の神星の一人吉川も言うことだった。
「君達は親しくしていても今は敵だが」
「戦の後は間違いなく味方になり」
「国土も民もだ」
そのどちらもとだ、吉川はクルマに述べた。
「荒らすつもりはない」
「悪意もないですね」
「ある筈がない」
吉川はきっぱりとした口調で答えた。
「あればだ」
「それはですね」
「星の者のすることではない」
「世界を救うならともかく」
「悪意を見せるなぞな」
「そうして戦をすれば」
「それ何か別の者だ」
この世界を救う星の者でなくてというのだ。
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