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八条学園騒動記

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第五百二十九話 お見合い当日その五

「寝られないのです」
「そこまでなのですか」
「そうです、ですから」
 それ故にというのだ。
「毎晩その二つをしてから」
「眠られていますか」
「そうです」
「それはまた」
「そして毎朝のランニングと入浴も」
 この二つもというのだ。」
「欠かせないです」
「そちらもですか」
「この二つをして」
 そうしてというのだ。
「毎日過ごしています、ですが他のことは」
「いいのですか」
「はい」
 こうマリアに答えた。
「そうなのです」
「そうですか、ご自身のこだわりですか」
「そうです、どうも毎日そうしたことをしないと」
 どうにもというのだ。
「私は落ち着かないのです」
「そうですか、それでトラップさんでしたね」
「はい、ジークフリート=トラップといいます」
「ジークフリートさんですか」
「父が歌劇が好きでして」
「ワーグナーの楽劇の登場人物ですね」
「ニーベルングの指輪の」
 トラップはすぐに答えた。
「主人公ですね」
「そうでしたね」
「ジークフリートと神々の黄昏の主人公で」
 ニーベルングの後半二つの作品となる、この二つの作品になりようやくシリーズの主人公登場となるということだ。
「父が好きな作品なので」
「それでお名前にですか」
「付けられました」
「そうでしたか」
「それにこの名前は」  
 ジークフリートというそれはというと。
「ワーグナーが息子に名付けた」
「確かジークフリート=ワーグナーでしたね」
「その人の名前にもです」
「なっていますね」
「そうです、二つの人物の名前ですね」
「そうでしたね」
「トリスタンも考えたそうですが」
 トラップは笑ってマリアにこの名前も出した。
「ですが」
「そちらのお名前は」
「こちらはナチスの高官の名前でもあったので」
「確かハイドリヒでしたね」
「はい、あの人物の」
 連合ではナチスの中でも屈指の悪人とされている、実際に冷酷で好色な謀略家でありナチスの多くの謀略や事件に関わっている。
「それはよくないとです」
「思われてですか」
「使わなかったとです」
 自分の名前にというのだ。
「父に言われました」
「そうでしたか」
「父は特にハイドリヒが嫌いで」
「評判の悪い人物ですね」
「私によくです」
 マリアに嫌悪を感じさせる声で話した。
「ハイドリヒの様な人間にはです」
「なるなとですか」
「それも絶対に」
「そう言われていますか」
「はい」
 実際にというのだ。
「その様に」
「そうですか」
「悪人だからこそ」 
 それも極悪人とされている、連合では。 
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