八条学園騒動記
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第五百二十九話 お見合い当日その二
「これ以上はないまでにです」
「いいですか」
「まことに」
こう言うのだった。
「実はこれからお会いする」
「相手の人もですね」
「いつも靴は奇麗ですが」
磨かれているがというのだ。
「自分自身で、です」
「磨かれていますか」
「自分の靴は自分で磨くものと」
「言われていますか」
「リンカーンがそう言っていたと」
アメリカ合衆国第十六代大統領だ、奴隷解放で知られており南北戦争で勝利を収めたことでも知られている。
「いつもそう言っていまして」
「そういえばリンカーンも」
マリアもその話は知っていた、リンカーンのその逸話は。
「自分で、でしたね」
「大統領、国家元首でしたが」
「自分の靴はですね」
「自分で磨いていました、ですから」
「これからお会いする人も」
マリアは彼を一度博物館で少し見に行って実際に見たことをこの時も隠しそのうえで先生に応えた。
「リンカーンのその言葉通りに」
「はい」
まさにというのだ。
「磨いていまして人に強制もです」
「他の人に靴を磨けとも」
「言わない人です」
「そうなのですか」
「自分のことは自分でしますが」
清潔にしているがというのだ。
「ですが」
「他の人にはですか」
「強制しない」
「そうした人ですか」
「非常にいい人です」
「自分に厳しく他人に優しくですね」
マリアはここでこうも言った。
「要するに」
「はい、言うならば」
そうなるとだ、先生も答えた。
「そうした人です」
「出来た人なのですね」
「若いですが」
それでもというのだ。
「かなりです」
「それはいいですね」
自分で行って他人に強制はしない、そのことにマリアは内心これはよかったと思いつつ先生に対して応えた。
「立派な人ですね」
「はい、ただ欠点もありまして」
「と、いいますと」
「自分で決まったことを一日にしないと」
「気が済まないですか」
「そうしたところもあります」
先生はマリアにこうした話もした。
「そこがです」
「困ったところですか」
「毎日ランニングと入浴と靴磨き、アイロンをしないと」
「その全部をですか」
「しないとです」
「気が済まないのですか」
「何分こだわりが強くて」
そうした性分でというのだ。
「そこが欠点になります」
「一日に決まったことを全部しないと駄目な人は」
「いますね」
「はい、それでこれからお会いする人も」
「そうした性分で」
「毎日そういったことをでか」
「しないといけないのです」
こうマリアに話した。
「あくまで自分だけのことですが」
「毎日そうしないと気が済まないのは」
「はい、強迫観念と言うと言い過ぎですが」
それでもというのだ。
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