夢幻水滸伝
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第百五話 鹿に気をつけつつその十二
「各国で星の人同士で」
「中南米もそうだったな」
「それは南洋も中国もアメリカも同じで」
「おめえさん達と一つになってるアフリカもな」
「何処も最初はそうでした」
「日本もな、だから敵同士だったけれどな」
「その時は強いと思いました」
敵だった時の今の仲間達はとだ、アルゲダスは幸田に確かな口調で答えた。
「ほんまに」
「そうだろ、おいらだってそうだったしな」
「幸田さんは日本の東国の棟梁でしたね」
「東国の統一までもな」
「一緒に東国におられた人達が敵で」
「東国の棟梁になってからもな」
幸田は坂口や室生と対立し綾乃達と戦い降るまでのことを思い出しながらそのうえで話した。今の彼にとっては懐かしい思い出だ。
「色々あったしな」
「だからですね」
「ああ、それでな」
それでというのだ。
「味方になった時にな」
「実感しておられますか」
「頼りになるってな」
「それは誰も何処も同じですね」
「そういうことだな」
「手強い敵は味方になれば頼もしい」
シルビーナもこの言葉を出した。
「そういうことですね」
「おめえさん達も実感している様にな」
「では」
「おう、そういうことでな」
まさにとだ、こう言ってだった。
幸田はふと近くを通った鹿に煎餅を出して食べさせた、それからあらためて中南米の星の者達に話をした。
「よく食うな」
「ですね、ほんまに」
シルビーナは鹿が食べる光景を見つつ応えた。
「大きな身体に相応しく」
「とにかく何でも食うからな」
「お菓子も子供のお弁当も」
「草だってな」
「ああ、ここは公園ですから」
「それこそ下はな」
自分達の足元はとだ、幸田はこのことも話した。
「草ばかりだろ」
「それで公園の芝生の草もですね」
「食うんだよ」
「そうしていますか」
「見れば時々そうしてるぜ」
「それがこの公園の芝刈りにもなってますか」
「少なくともこの世界ではそうだな」
この世界の奈良公園ではというのだ。
「そうなってるな」
「食べものは豊富なんですね」
ガブリエラはこのことについて納得した。
「ほんまに」
「おう、そうなんでい」
「それでここまで大きくなりますか」
「本があったら紙だって食うしな」
先程話した通りに何でも食うというのだ。
「そしてな」
「お菓子もお弁当も」
「子供から奪ってでもしてな」
「食べますね」
「悪食だからな」
幸田はガブリエラに話した。
「怖いんだよ」
「そうですね」
「そんな連中だけれどな」
「この平城京のマスコットで」
「やっぱり注目されててな」
「芝生も食べてくれますね」
「尊大で性根が悪くてな」
とかく性格はよくないというのだ。
「そんな食い意地だけれどな」
「悪いものばかりではないですね」
「ああ、だからな」
それでというのだ。
「おいら達もそれなりに楽しもうな」
「それでは」
「ああ、今はな」
やがて戦うことになる、だがそれでもとだ。
幸田は中南米の人の星の者達に話した、そうしてそのうえで今は鹿を見て話をして親睦を深めるのだった。
第百五話 完
2019・3・8
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