八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第二百四十話 二重奏その六
「本当にな」
「芸術にも努力が必要なんだよ」
「あの子達は本当に努力してるよ」
「あの子達はな」
「本当にな」
「そうしてるよな」
暖かい言葉だった、色々批評しているけれどそが優しい評価なら本当に聞きやすい。某料理漫画みたいに料理店でまずいだの違うだのとか言う批評は営業妨害だから訴えるべきだと思うけれどこれならいい。
それでだ、僕はいよいよ三年生の人達の演奏を聴いたけれど。
「ショパンだよな」
「ピアノはな」
「やっぱりショパンだよな」
「ショパン聴かないとな」
「音楽じゃないからな」
「本当にな」
「そうじゃないとな」
それこそというのだ。
「人間生きてる意味がないな」
「若しショパン聴かないとな」
「人間不幸になるよな」
「聴いてないだけでな」
「俺達もこれから幸せになれるな」
「ショパン聴けるだけでな」
「モーツァルトもベートーベンもいいけれどな」
これまでの演奏もというのだ。
「ピアノは何ていってもな」
「本当にショパンだな」
「じゃあ聴くか」
「聴かせてもらうか」
こうしたことを話してだ、そのうえで。
演奏をさらに聴いていった、すると最後に。
早百合さんが出て来た、白のドレスがよく似合っていた。そして。
横に黒の燕尾服の人もいた、ピアノ部の演奏では男の部員の人もいる。けれどここで僕は少し変に思った。
男の人と一緒にピアノに座ったからだ、それでまさかと思ったらここで隣の人達がまた二人で話をした。
「重奏か」
「それだな」
「これからするな」
「ああ、ショパンで重奏か」
「それもいいな」
「面白いな」
「というかな」
相変らずの暖かい批評だった。
「ショパンも重奏もな」
「これから聴かせてもらうか」
「最後はこれだしな」
「トリの意味でもな」
「楽しませてもらうか」
「これからな」
こんなお話を聴いていると重奏がはじまった、するとだった。
お二人共それぞれ腕があった、しかもただお二人の技術があるだけでなくだ。息もよく合っていた。
それでだ、僕はまさかと思ったが隣の人達はこう言った。
「よかったな」
「ああ、最高の重奏だったな」
「いい演奏だったな」
「本当にな」
「落ち着いたな」
「最後の二人もな」
「息まで合っていてな」
それでというのだ。
「よかったな」
「満足させてもらったよ」
「これで終わるのが残念だったな」
「今度のコンサート期待出来るな」
「今回の出来だとな」
「本当にそうだよな」
「これはな」
こうしたお話ばかりでこれといって早百合さんのことはお話しなかった、それで僕は普通にまずはコンサート会場を去ろうと思ったが。
ここでだ、またスマホに早百合さんから連絡が来た。
「今終わりましたが」
「はい、最後までです」
こう早百合さんに答えた。
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