八条学園騒動記
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第五百二十七話 お見合い相手その十
「私はいつもそこが心配です」
「人生においてですね」
「学生さん達は」
自分が受け持ったというのだ。
「若い頃にやんちゃを知って」
「社会を知ることもですね」
「複雑で表も裏も」
その両方をというのだ。
「知るべきですが」
「そこで大事なのは」
「外道を知っても」
「そこに堕ちないことですね」
「外道を外道と知る」
それがというのだ。
「最も大事なのは」
「人としてですね」
「はい、ですから」
それでというのだ。
「守るべきです」
「そのことは」
「全く以て」
「そういえば」
ここでマリアはこんなことも言った。
「人は深淵を覗き込みますが」
「ニーチェの言葉ですね」
ミンチンも応えた。
「それは」
「はい、深淵もまた人を見ている」
「その通りですね」
「そして深淵にですね」
「引き込まれるので」
そうされるというのだ。
「ですから」
「深淵つまり外道に引き込まれて」
「外道になってはいけないです」
「そうですね、人はです」
マリアはまた言った。
「外道を知っても外道に魅了されて」
「外道に堕ちない」
「そのことを忘れてはならないですね」
「暗黒面を知っても」
ある宇宙を舞台にした古典SF映画の例えもだ、ミンチンは出した。
「その暗黒面には堕ちない」
「あのキャラクターの様に」
「それがあの人の悲劇でしたね」
「純粋で立派な主人公だったのが」
若い頃の話だ、そのキャラの。
「それが、でしたね」
「堕ちて」
暗黒面にだ。
「そしてでしたね」
「次のシリーズでは悪役で」
エピソードの四から六になる。
「悲しい結末を迎えましたね」
「そうなったことを見ると」
「暗黒面に堕ちてもそうで」
「外道になっても」
「どちらでもですね」
「最期は悲しいですね」
「まことに」
そうだと言うのだった、それでだった。
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