戦国異伝供書
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第五十三話 三度南へその六
「宜しいでしょうか」
「和上の言う通りでおじゃる」
義元は雪斎に微笑んで答えた。
「この度の戦の仲裁をしてでおじゃる」
「双方に恩を売り」
「特に武田殿にでおじゃるな」
「はい、それをてことして」
仲裁の恩義、それをというのだ。
「武田殿とは北条殿を交えて」
「三つの家で、でおじゃるな」
「盟約を結び」
そしてというのだ。
「上洛、少なくとも尾張攻めのです」
「後顧の憂いを断つでおじゃるな」
「そうしましょう、ですから」
「この度はでおじゃるな」
「恩を売りましょう」
「わかったでおじゃる」
義元は雪斎に笑みで応えた、こうして彼は戦の仲裁に川中島に赴くことになったが駿府を後にする時にだった。
雪斎は自分を見送る元康に優しい笑みを見せて語った。
「竹千代、見ておくのじゃ」
「これからの和上のされることを」
「左様、残念だがお主は連れて行けぬが」
その川中島にというのだ。
「この駿府でな」
「見てですか」
「学ぶのじゃ、ここで政にあたりながらな」
「はい、お館様はそれがしにです」
「どんどん大きな仕事をさせてくれるな」
「有り難いことに」
「それはお主の器を見抜いているからじゃ」
それ故にというのだ。
「お主ならば出来るとな」
「そう見てくれてですな」
「それで大きな仕事を任せるのじゃ」
それも次々にというのだ。
「しかもお主はしくじっておらぬ」
「それがしの三河からの家臣達が助けてくれまして」
「ははは、その謙虚さもよいことじゃ」
雪斎は元康のその気質についても褒めた。
「そうした者であるからじゃ」
「お館様もですか」
「重く用いられる、それは将来お主がじゃ」
元康、彼がというのだ。
「当家の執権となる」
「それがしがですか」
「それだけの者だからな」
「重く用いてですか」
「ほめられるのじゃ、そしてじゃ」
さらに言う雪斎だった。
「当家の執権とはな」
「和上のですか」
「後となる、わしもそう思っておる」
「拙者が和上の」
「だからお主に色々教え授けてな」
そしてというのだ。
「今もじゃ」
「よく見ておく様にと」
「言っておるのじゃ」
「外にどうするかも」
「そうじゃ、ではな」
「はい、この駿府で」
「わしの働きをよく見てくれ」
またこう言うのだった。
「よいな」
「さすれば」
「ではな」
元康にも言ってだった、雪斎は川中島へと赴いた。そこでまずは晴信の本陣に入って彼に今川家の考えとして述べた。
その話を聞いてだ、晴信は雪斎に言った。
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