| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

夢幻水滸伝

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第百二話 大社の中でその九

「地獄の番犬だからね」
「それでだね」
「そう、そしてね」
「普段は大人しい」
「戦いの時や悪人を懲らしめる時は徹底的だけれど」
 それでもというのだ。
「普段はこうなんだよ」
「悪い奴じゃないんだね」
「姿形や居場所で誤解されてるんだよ」
 このことを自分で言うのだった。
「困ってるよ」
「ヒーローやね」
「そうありたいで」
 ケルベロスも関西弁で話した。
「僕にしても」
「それはええ心掛けや」
「とはいってもご主人正義感は強いけど」
 ケルベロスはセリューも見て話した。
「罪を憎んで人を憎まずだから」
「私は憲兵っすよ」
 セリューは自分の役職の話もした。
「警官もやってるっすが」
「アメリカも警察大臣兼憲兵総監だからね」
「警官も憲兵も法律で動くっす」
「そこから逸脱したら駄目だね」
「ダディに言われたっす」
 その様にというのだ。
「今もっす」
「お父上からでごわすか」
「はい、海兵隊っす」
「アメリカ海兵隊でごわすか」
「そうです、海兵隊中佐です」
 セリューは北原に話した。
「日々軍務とトレーニングに勤しんでいるっすよ」
「それでおはんにでごわすか」
「法律を守れ、暴走するなとっす」
 その様にというのだ。
「言われていますので」
「それで、ごわすか」
「正義は守れ、しかし人は憎むな」
「それがおはんの考えでごわすな」
「そうっす」
 そう心に刻んでいるとだ、セリューは北原にこうも話した。
「裁くのは人でなく法律っす」
「捕まえるだけでごわすな」
「悪い考えでしょうか」
「いや、いい考えでごわす」
 北原はセリューに肯定の言葉で答えた。
「まことに」
「そうっすか」
「というか間違いと言われたことはあるでごわすか」
「それは特に」
「そうでごわすな、正義は暴走すれば」
 自分では正しいと思うことを行っていてもというのだ。
「その時はでごわす」
「もう正義ではないでごわすね」
「正義は理性と倫理でごわす」
 この二つがあってこそというのだ。
「この二つを備えていることが絶対でごわす」
「軍人や警官がそれを忘れると」
「最悪の暴力集団になるでごわす」
「その通りっすね」
「暴力は正義が振るうものではないでごわす」
 少なくともそれを掲げる者が行うものではないというのだ。
「決して」
「そうですね」
「それがわかっているならでごわす」
 それならというのだ。
「おいどんが言うことはなかとでごわす」
「そうですか、しかし」
「しかしといいますと」
「北原さんの言葉は独特ですね」
「鹿児島弁ですね」 
 ミニーも言ってきた。
「そうでしたね」
「いや、こうした言葉とは」
 オニールも述べた。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧