八条学園騒動記
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第五百二十五話 博物館へその四
「そうだったのですね」
「はい、それで軍服はです」
「お好きですか」
「主人もトレンチコートが好きで」
「トレンチ、塹壕ですね」
「あのコートもフロックコートも好きです」
トレンチコートは名前からもわかる通り第一次大戦の時の塹壕戦から生まれたものだ。そしてフロックコートも軍服から生まれたものなのだ。
「どちらも」
「軍服についてはですか」
「私は嫌いではなくて」
「むしろお好きで」
「それなりに知っているつもりです」
軍事に疎く戦争は嫌いと言ってもというのだ。
「ですから博物館で展示されている軍服も」
「そちらはですか」
「観ていてわかりました」
「知識もおありだったので」
「そしていいなとも思いました」
「そうでしたか」
「そこだけは。ただ」
ここでミンチンはこうも言った。
「北朝鮮軍の軍服もありましたが」
「二十一世紀まで存在した国ですね」
「あの軍服はよくなかったですね」
「どういった軍服ですか?」
「まず帽子が異常に大きく」
ミンチンはこちらから話をはじめた。
「肩章も変に大きいのです」
「軍服とバランスがですか」
「取れていなく軍服の色も」
それもというのだ。
「妙に悪くて」
「そうした風で、ですか」
「どうにもです」
「よくなかったですか」
「デザインが悪いですね」
「そうした軍服もありますか」
「はい、全体的にソ連軍の軍服ですが」
北朝鮮は国家としての内容はともかくソ連を盟主とする共産圏の国であったのでソ連軍の軍服を元にしていたのだ。
「しかし」
「それでもですか」
「そのデザインをです」
「悪くしたものですか」
「ソ連軍の軍服は恰好いいです」
こちらはいいというのだ。
「今は採用されていませんが」
「ロシアでもですね」
ロシアはソ連の主要構成国でありソ連崩壊後は後継国家とされている。
「あの軍服は」
「ロシア軍も黒と金ですから」
つまり海軍の軍服になっているのだ。
「ですから」
「今ではですね」
「もう連合では見ない」
「そうした軍服ですね」
「もう存在しない」
「そうです、そして」
ミンチンはマリアにさらに話した。
「私が嫌いな軍服もありましたが」
「お嫌いといいますと」
「昔のエウロパ諸国の軍服です」
眉を曇らせてだった、ミンチンは話した。
「フランス革命の頃までの」
「ああ、ナポレオン軍でもですね」
「あの派手な」
「フランス軍の」
「イギリスやオーストリアもそうでしたね」
「プロイセンもでしたね」
「あの様な無闇に派手な」
そうしたというのだ。
「軍服はです」
「お嫌いですか」
「やはり軍服は連合軍の様な」
ミンチンは今の軍服の話をした。
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