八条学園騒動記
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第五百二十四話 先生のお見合いその八
「好きで」
「それで、ですか」
「インドネシアのカレーはそれぞれの地域でそれぞれの味がありますが」
「教頭先生のご出身地ではですね」
「辛口で」
「だから辛口のマトンカレーがですね」
「好きでして」
それでというのだ。
「こちらでもです」
「召し上がられているのですね」
「左様です」
その通りだというのだ。
「私も」
「そういうことですか、ですが辛口なら」
マリアも言うことだった。
「私もです」
「シーフードカレーは、ですね」
「あのカレーのルーは独特になるので」
それでというのだ。
「シーフードカレーの」
「そしてそのルーの味がですね」
「辛口で」
「では先生も」
「シーフードカレーについては」
一番好きなこのカレーではというのだ。
「一番好きです」
「そうですか」
「甘口のシーフードカレーもありますが」
「先生としてはですね」
「あまり」
どうにもと言うのだった、マリアも。
「辛口のものと比べますと」
「そういうことですか」
「甘口のカレーは」
こちらのカレーはというと。
「チキンカレーですね」
「そちらのカレーがお好きですか」
「はい、それもローストチキンをご飯の上に置いて」
「そこにカレールーをかける」
「そうしたチキンカレーで、です」
「甘口ですか」
「それが好きです」
こちらのチキンカレーはローストチキンカレーとも呼ばれる。
「甘口ですと」
「そうですか」
「私としましては」
「そのカレーは私も好きです、そして」
「そして、ですか」
「お見合いの彼は小乗仏教でかつビコラチャ神やマケマケ神を信仰していますが」
そうした信仰でというのだ。
「どの宗教も食事のタブーはなく」
「今食事のタブーがある宗教は」
「強いて言うならイスラムですね」
「ユダヤ教や厳格なベジタリアンの宗教は別にして」
「ですがイスラムも」
その実はというのだ。
「アッラーに謝罪すればです」
「食事の前にですね」
「許してもらえます」
「豚肉等を食べても」
「それ位はアッラーは許されます」
「イスラムの寛容さですね」
「はい」
まさにとだ、教頭はマリアに答えた。
「偶像崇拝や殺人は絶対に駄目ですが」
「豚肉を食べる位は」
「いいのです」
「そうした宗教ですね」
「そうです、アッラーの御心は人の寛容さなぞです」
それこそというのだ。
「遥かに及ばぬまでにです」
「寛容ですね」
「コーランでもです」
イスラムの聖典であり信仰の原典であるこの書でもというのだ。
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