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夢幻水滸伝

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第九十六話 仁王像その十二

「絶対にな」
「遊ぶ金でないとですか」
「博打は何か」
 リサールはさらに話した。
「遊びと言えば遊び、けどな」
「遊びでもですか」
「運の要素が強いな」
「それは確かに。ギャンブルとはです」
「そや、技術や知識も関わるが」
「やはり運が大きいですか」
「その運の見極めも必要でや」
 それでと言うのだ。
「冷静になることが必要や」
「運がないと思うと諦める」
「そや、そもそも親やないと儲からん」
 博打のこの真理も言うのだった。
「そやからわしはカジノや賭場もやってる」
「公の場でしてますな」
 尚リーの政策でギャンブルは公の場のみとしており借金が多くなりそうな者にはさせない様にしている。
「その収入も大きいです」
「そや、博打はな」
「親やないと儲かないことをですな」
「しっかりと頭に入れてや」
 そのうえでというのだ。
「やらなあかん」
「だからこそですか」
「勝とうとは思わんことや」
「遊びですか」
「勝とうと思うと欲が出る」
 まさにそれがというのだ。
「欲が出るとムキになって目が曇ってな」
「運の見極めが出来なくなりますな」
「それで負ける、賽子の目もカードの出方もルーレットの場所もや」
 即ち全てがというのだ。
「どんな権力者でもどうにもならん」
「そうした言葉もありますね」
 カイも出て来た。
「それもこの日本に」
「白河院のお言葉だな」
 室町が言ってきた、リサール達のその話に。
「天下の君のあの方にもどうにもならないものが三つあった」
「そのうちの一つだよな」
「まずは鴨川の水の流れだった」
 よく氾濫を起こし都を水害で悩ませていたのだ。
「そして僧兵だ」
「ああ、宗教の権威と精強さで」
「そうだ、白河院も困っておられたのだ」
 こうカイに話した。
「それで二つ目だ、そしてだ」
「最後のはな」
「まさにその通りだ」
 室生はリサールに顔を向けて答えた。
「双六の賽子の目もだ」
「思う様にならなかったんだな」
「それで言われていた」
「当時の法皇、上皇は天皇陛下よりも上にありましたね」 
 カイはこのことを指摘した。
「確か」
「そうだった、何しろ譲位された天皇陛下だ」
 そのうえで出家されたのが日本の法皇だ、皇室は神道の中心におられるが日本では仏教も同時に信仰されているのでこれもまたよしだったのだ。
「それだけにだ」
「権威がおありでしたね」
「まさに天下の君であられたが」
「その天下の君でもですね」
「どうにもならなかったのだ」
「それが博打、ギャンブルってやつなんだよ」
 リサールはまた言った。
「運の要素が大きいんだよ」
「だから欲を出せばですね」
「負けるんだよ」
 リサールはこうカイに話した。
「頭に血が上ったら終わりだしな」
「やはり冷静さを欠いて」
「そうだよ、そこで負けるからな」
 それ故にというのだ。 
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