八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第二百三十一話 現在進行形の美しさその十
「そんな感じ」
「いや、高知生まれで苗字が同じだけれど」
それでもとだ、坂本君は友奈さんに苦笑いのまま言った。
「とてもね」
「龍馬さんとは違うの」
「違うから、あと苗字は同じでも」
それでもというのだ。
「血縁関係はないからね」
「そうなの」
「そもそも坂本龍馬さん子供いないから」
そのうえで死んでいるのだ。
「あと親戚の人達の誰とも」
「お兄さんやお姉さん達とも」
「何の関係もないから」
「そうなの」
「うん、全く何の関係もないよ」
こう友奈さんに話していた。
「僕はただの高知生まれの坂本って苗字なだけだよ」
「そう。けれど」
「それでもなんだ」
「私は一緒にいたいから」
友奈さんはそのお顔を微かに微笑まさせて坂本君に言った。
「こうして」
「そう言ってくれるんだ」
「ええ、そうするから」
「それじゃあ僕もね」
「一緒にいてくれるの」
「そうさせてもらうよ」
「おい、行くか」
小谷君がここで僕に言ってきた、友奈さんと坂本君に対して気を利かしてのことであるのは明らかだった。
「これから」
「そうだね、じゃあね」
「ああ、またな」
「うん、友奈さんまたね」
「ええ、また」
友奈さんの顔は微かに笑ったままだった、そのうえで僕達に手を振ってくれたけれどその仕草も普段以上に上機嫌な感じだった。
僕達は友奈さんと別れてからも二人で一緒にいた、学園の廊下を歩きながら僕は小谷君に笑顔で話した。
「いい感じだったね」
「ああ、あの二人な」
「凄くね」
「お前が管理人やってるアパートに住んでるんだよな」
「友奈さんもね」
「そうだよな、そうした人が幸せだとな」
「僕も嬉しいよ」
小谷君にこう返した。
「本当にね」
「やっぱりそうだよな」
「うん、ただね」
「ただ。どうしたんだよ」
「いや、気付いたらだったね」
このことは井上さんも日菜子さんもだ。
「友奈さんも交際はじめてるね」
「そんなものだろ」
「そんなもの?」
「人の恋愛っていうのはな」
「周りが知らないうちになんだ」
「はじまってるものだろ、それで周りが知った時はな」
その時はというと。
「もう結構な」
「出来上がっているんだ」
「そんなものだろ、本人さん達にとっては大きなことでもな」
「周りにとってはだね」
「そんなものだろ」
まさにというのだ。
「気付いたらだよ」
「付き合っていたとか」
「そんなものだよ」
「恋愛はそうなんだね」
「そりゃ本人さん達はな」
「一生懸命で」
「そのことに専念していてもな」
そうしたものでもというのだ。
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