夢幻水滸伝
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第九十六話 仁王像その三
「そうした話はまさに水掛け論になり」
「きりがない」
「左様ですね」
「仏教の仏達の中でもそうだ」
「だからこうした議論は」
「私はあまり好まない」
室生はアルフィアンにもこう話した。
「そのことは言っておく」
「左様ですね」
「それは仁王も同じだ」
今自分達が見ている仏達もというのだ。
「確かに非常に強力な仏達だがな」
「見ていますと」
燃え盛る様な赤い髪の毛に赤がかった肌で厚い生地の赤いコートと白いズボン、そして赤のブーツという恰好の男が言ってきた。
人速ポール=バイテだ。ハイチ出身の火の精で職業は海賊だ。持っている神具は炎の鞭であるフェニックスの尾だ。
その彼がだ、こう言うのだった。
「非常に強そうで」
「最強に見えるな」
「そしてそれはです」
「本堂の中の四天王達もだな」
「どの仏達も強く感じ」
そしてというのだ。
「室生さんの言われる通りに」
「強さの比較がしにくいな」
「非常に」
「そういうものだ。天使達も同じである筈だ」
彼等もというのだ。
「ミカエルとメタトロンどちらが強いか」
「難しい話ですな」
鉄の身体の大男でそこからさらに重厚な鋼鉄のプレートメイルを着ている、ゴーレムのアーマーナイトだ。
人鎮星マタリ=ハウオファだ、トンガ出身であり神具は無数の炎を放つペレの火だ。その彼も言うことだった。
「どちらがとは。南洋においても」
「マオリや他の英雄とだな」
「比較しますと」
どうにもとだ、ハウオファは室生に思慮する顔で答えた。
「難しいです」
「そういうものだ、神仏や英雄の比較はだ」
「しにくいものですね」
「そうした話は楽しいかも知れないが」
「結論は出にくい」
「一旦その場で出てもだ」
それでもというのだ。
「すぐに異論が出てだ」
「堂々巡りとなり」
「結局結論は出ない」
「そうした類ですね」
「ではもうそうしたお話は」
青い蛇人の女が言ってきた、機能的なズボンとブーツ、それに革の鎧とシャツという恰好だ。腰には短めの剣と鍵がある。この鍵が神具であらゆる扉を開けるマスターキーだ。
人羅星アユ=ウィリルジャ、職業はシーフで出身はインドネシアだ。この女もまた南洋の星の者なのだ。
「笑ってするもので」
「本気で行うとな」
「厄介なことになりますね」
「そうなる、だから私はだ」
室生はアユにもこう話した。
「あまりしない様にしている」
「そういうことですね」
「そうだ、しかしだ」
「しかしとは」
「この仁王像を見て思うことはだ」
室生は怒りの顔で身構えている彼等を見つつ言うのだった。
「この体格の見事さがな」
「素晴らしいですか」
「そう思う、筋骨隆々としているな」
「あれですよね」
コープチッティが応えた。
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